56、最後の夜 ページ23
ーー
安室透として。組織の探り屋 " バーボン " として。
……そして、その組織の敵である、公安警察として。
忙しなく動き続ける合間を縫い、重要な連絡以外を全てシャットアウトした上で、今夜のスケジュールを空け…
彼女の家のチャイムを連打した。
今日は何があっても絶対、Aに会わなくちゃいけないから。
「……あむぴ」
呆れたような顔で玄関を開けてくれたAは、以前よりはチャイム連打の耐性がついた様子で。
…慣れって、怖いね。本当にごめんね。
申し訳ないな、とは思いながらも笑顔で『こんばんは』と挨拶。
追い返すこともなく、僕を部屋に招き入れてくれた彼女の背後から強く抱きしめた。
「ぅ、わ…?…あむぴ?」
「…」
……もしも。
これが最後になったら。
ごめんね。
例の組織を解体させるための計画は、それを決行する機会を伺うだけの段階で。
" 絶対死んでやらない " なんて強く思ってはいても…
こればっかりは、気持ちだけでどうにかなる問題じゃないと。本当は分かってる。
死ぬかもしれない不安は、確実に…僕の心の隅にあって。
けれど、Aを抱きしめている間は、不安なんか少しも感じなくて…それが、嬉しかった。
僕は、どうしても君の傍で生きたい。
「Aさん、何も言わないんですね」
「ぅ…ん?…なんの、話?」
彼女の部屋のベッドは、狭くて。
簡単に落ちてしまいそうになるから、今にも眠りに落ちそうなAの身体をしっかり抱きしめた。
「って、いやいや…、隣なんだから…家に帰りなよ、あむぴ…」
「あれ?声掠れてます?いつもの元気が無いようですが…大丈夫?」
今日は、帰らないよ。
「あむぴ、は…元気だね…」
「はい!とっても!」
「…」
笑顔で答えながら、Aの頭を優しく撫でれば、彼女は遠い目をして…瞼を閉じた。
「あれ?寝ちゃうんですか?」
「あむぴのせいで、つかれたし…すごい、ねむいもん…」
本当は、まだAの声を聞いていたかったけど。
…今日も変わらず、こんな僕を受け入れてくれて。
ありがとう。
「おやすみ、Aさん」
「ん…はやく帰りなよ?」
「え?帰りませんけど」
「…エ」
重たそうな瞼を開け、僕を見つめる彼女の頬を撫でて、クスクスと笑った。
今夜は、ずっと抱きしめさせて。
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re(プロフ) - arisuさん» arisuさん、2人の視点のお話を読んで下さって、本当にありがとうございます…!!温かいお言葉、とっても嬉しいです😭✨✨書いて良かった…!楽しんで頂けたようで、私はとっても幸せです(*^^*)💕こちらこそ、ありがとうございました!✨ (2023年4月21日 10時) (レス) id: 78ebe0a207 (このIDを非表示/違反報告)
arisu - 夢主視点も降谷さん視点も最高でした🥹ありがとうございます✨👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨ (2023年4月20日 14時) (レス) @page31 id: 8db8ff9f57 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - やっちさん» やっちさん、コメントありがとうございます…!✨最高に良かったの言葉、めちゃくちゃ嬉しいです!!書いて良かった😭✨夢主ちゃん羨ましいですよね🤣💕温かなコメントを頂けて、とっても幸せです(*^^*)本当にありがとうございます!! (2022年7月21日 12時) (レス) id: 6b9303296e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 安室さん最高に良かったです!夢主さん羨ましい〜 (2022年7月19日 14時) (レス) @page31 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 自宅警備員Nさん» 自宅警備員Nさん、コメントありがとうございます…!本当ですか…!(;-;)✨キュンキュンして頂けたようで、私はとても幸せです!評価も押して下さって感謝しかありません(;-;)✨これからも頑張りますね(*^^*)ありがとうございます…! (2021年10月18日 13時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年8月5日 20時