47、違う世界 ページ14
彼女には、僕の居ない休日にポアロを訪れるという選択肢も、ここ以外の場所で会うという考えも無いらしい。
どうせ、却下するけど。
何にせよ、僕に会いたくない事には変わりがなくて…
「丁度よく、" 僕の出勤前に " 予定が合えばいいですね?Aさん?」
悪戯っぽくそう言えば、嫌な予感を察知したらしい彼女は小さく震えた。
「今度、蘭さん達に話してみます。…返事、待っていて下さいね?」
ぎこちなく頷いたAは『オネガイシマス…』と、困ったように笑った。
「蘭さんは、この上の階に住んでいらっしゃるんですよ。コナン君も。」
何かが見える訳でもないのに天井を仰いで『…それは常連さんだ』と呟いたA。
彼女的には、2階が探偵事務所だという認識も無かったようで。
" 眠りの小五郎 " の娘さんだと言ったら、その事務所がここにあることも、蘭さん自身にも感心していた。
「毛利先生の弟子なんです、僕」
「え゛」
本気で驚いたらしい彼女は、手に持っていたカップを机に落として。ゴンという鈍い音と共に、まだ少し残っていたコーヒーが零れた。
本当に僕のことを知らないんだな。Aは。
知らないというか。
…知ろうと、しない。
彼女から積極的に、 " 僕自身 " を知ろうとした事は少ないと…気がついた。
それが、潜入捜査中の僕にはひどく都合が良くて…
同時に。
…寂しかった。
「うわぁあ!!あむぴ、ご、ごごめん…!コーヒー零した…!」
「大丈夫ですよ。カップが割れなくて良かった。…怪我は?」
すぐにテーブルを拭きながら問いかける。
「大丈夫…」
「良かった。…服、少し汚れましたね」
「ん?こんなの平気!…もうクローズなのに…迷惑かけて、ごめんね」
『迷惑じゃないよ』と頭を撫でれば、安心したように笑った。
Aはおしぼりで服を叩きながら『あむぴも探偵さんだもんね…』なんて呟いて。
「あの有名な探偵さんの弟子なのか。…なんだか、私とあむぴ。住む世界が全然ちがうね…」
" あむぴはすごく人気者だし…前から知ってたけど " なんて付け加えて、困ったように眉を下げて笑う彼女。
突然、Aに突き放されたような。息が詰まる程の胸の苦しさを感じながら、笑顔で首を振る。
「…そんな事ないですよ」
僕を、そうやって遠ざけようとしないで。
本当に " 住む世界が違う " と思っているのは僕の方…だけど。
Aは、僕のような…
死に近い世界には、足を踏み入れないで。
絶対に。
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re(プロフ) - arisuさん» arisuさん、2人の視点のお話を読んで下さって、本当にありがとうございます…!!温かいお言葉、とっても嬉しいです😭✨✨書いて良かった…!楽しんで頂けたようで、私はとっても幸せです(*^^*)💕こちらこそ、ありがとうございました!✨ (2023年4月21日 10時) (レス) id: 78ebe0a207 (このIDを非表示/違反報告)
arisu - 夢主視点も降谷さん視点も最高でした🥹ありがとうございます✨👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨👏🏻✨ (2023年4月20日 14時) (レス) @page31 id: 8db8ff9f57 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - やっちさん» やっちさん、コメントありがとうございます…!✨最高に良かったの言葉、めちゃくちゃ嬉しいです!!書いて良かった😭✨夢主ちゃん羨ましいですよね🤣💕温かなコメントを頂けて、とっても幸せです(*^^*)本当にありがとうございます!! (2022年7月21日 12時) (レス) id: 6b9303296e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - 安室さん最高に良かったです!夢主さん羨ましい〜 (2022年7月19日 14時) (レス) @page31 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 自宅警備員Nさん» 自宅警備員Nさん、コメントありがとうございます…!本当ですか…!(;-;)✨キュンキュンして頂けたようで、私はとても幸せです!評価も押して下さって感謝しかありません(;-;)✨これからも頑張りますね(*^^*)ありがとうございます…! (2021年10月18日 13時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年8月5日 20時