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25、彼女と朝食 ページ25

ーー

「ワァ?!…あむぴ、スーツの日?レアだ!」

背後からやけに元気な声が聞こえて、振り返る。


「ん?おはよう、Aさん」
「おはようございます!」

翌朝。

きちんと睡眠を取れば寝起きは悪くないらしいAが、朝食を用意し終わった僕の元へ来て声を上げた。


その目は何故かキラキラしていて。

スーツが好きなのか、朝食が嬉しいのか…どちらか分からない。


「ご飯、食べます?」
「た、っ!たべる…!」

…僕の朝食だな。


2人で『いただきます』と手を合わせて。

…窓から差し込む光に、自然と心が穏やかになる。


「今日もいい天気だね、あむぴ」
「ですね」

思えば…Aと朝食をとったのは、これが初めてだった。
明るい僕の部屋にいる彼女は、少し新鮮で。


「ん…、今日は探偵のお仕事?…この前、私の家に来た時もスーツだったけど…やっぱり似合うね」

「うん。…ありがとう」

へにゃりと笑いながらそう言った彼女に、僕も笑顔を見せる。…スーツも好きなのか。


こんな些細な会話でも、Aに嘘をつかなければいけない事実に…少しだけ、胸が痛んだ。




『ご飯美味しい』と頬を緩める彼女は、僕の部屋に居るせいで緊張感が皆無なのか…
平日の朝にも関わらず、随分とゆっくりしていて。


「あの、Aさん?のんびりお食事中に申し訳ないですが……そろそろ急がないと遅刻しますよ?」

「……ハッ!」
「送ってあげるから。自分の部屋で支度を済ませて、またここへ来てください」


そう告げると、コクコクと頷いた彼女はすぐに食事を終えて『ご馳走さまでした!』と立ち上がった。

あわあわと後片付けをしようとする彼女に、『僕がやるから』と伝える。


「ぅ…何から何まで、ごめんね…!ご飯、美味しかった…ッ!すぐ支度してくる!!」

「ストップ!」
「…ぇ?」

そのまま玄関に走りかけた彼女の手を掴む。
振り返ったAは、首を傾げて。


「あ、あむぴ、私…急がないと」


「これ、昨日の服。それと…いくら隣とは言え、Tシャツ1枚で外へ出るのはやめてください」

「……ン?…うわぁぁあーー?!!」


自分の身体に視線を落として、叫ぶA。

全く恥ずかしがっていない時点で察してはいたが。


…本当に忘れてたのか。

抜けているどころの騒ぎじゃない。

顔を赤くしながら、慌てて昨日のスカートを履く彼女を見ていたら…

大きなため息が零れた。

「ア……Tシャツは洗って返します……あむぴ、めんご…」

「…いえ」

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真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時

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