検索窓
今日:48 hit、昨日:35 hit、合計:234,471 hit

9、思い出さないで ページ9

土下座をする女性も珍しいよな。と、目の前の光景を眺めながら思った。

顔を上げるように促すと、『おこって、ないんですか…?』なんて問われて。


『YES』の代わりに、Aが持っていた鍵を使って、隣の部屋を勝手に開けた事実を笑顔で告げると、
『文句なんてひとつもありません!!』と彼女は笑った。

…僕が言うことでは無いが。

笑い事じゃないだろ。



話を聞くと、Aが隣に越してきたのはつい先日らしい。
部屋を間違えたのもそのせいだろう。


「周りには既に挨拶を済ませたんですけど、あむぴのお家だけは…なかなかタイミングが合わなくて」

『ご挨拶できずに、すみませんでした』と。頭を下げながらお菓子を手渡してくれた。



「昨日の " 夜 " のことは」
「ひえっ?」

突然の言葉にピクリと震える彼女。
その耳元にそっと唇を寄せて。

『自力で、思い出してくださいね?』
なんて囁くと、慌て出した。

その様子が可愛くて…最低だと思いながら、もう少し。虐めたくなる。


「忘れられたままなのは…僕、寂しいですから」

「さ、寂しいって…ま、まさか…」

「それから…しっかり、 " 炎上 " …させてあげますから。これから、覚悟して?」

炎上を恐れているらしい彼女に、その言葉は効いたようで。

ぴしりと固まった彼女を立たせて、赤い唇に。

触れるだけのキスを落とした。


少し、離れがたく感じて…
そんな思いを消し去るように、クスクスと笑いながらAの手を引く。


「エ……ちょっ…!炎上、させるって……あむぴ!!やっぱり怒ってたの?!いや、怒ってるよね、そりゃそうだわ?!だ、だって!帰ってきたら顔見知り程度の女が、自分の家の鍵穴ガチャガチャしてるもんね?!その後寝るし!…ごめんなさいごめんなさい!あむぴ…っ!私の謝罪を受け入れて…」

「僕はもうポアロへ行くので。また遊びに来てくださいね、Aさん?」

「あっ!!むぴ……っ、」

玄関まで誘導した僕は、すぐにパンプスを履かせて。
彼女を家から締め出して鍵をかける。


「…はぁ」

静かになった玄関で、ため息をついて。
室内に残った彼女の香りを僅かに感じながら、支度を始めた。


キスをしたのは…彼女との繋がりが、1つでも欲しかったから。
昨夜、" 僕達は何も無かった " と。例え彼女が思い出したとしても。

…このキスの記憶だけは、絶対にAと僕を縛り付ける。


ー 自力で、思い出して。

なんて言ったけど。

別に、思い出さなくてもいいよ。

10、逃がさない→←8、隣の部屋



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (255 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
694人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

真実(プロフ) - reさん» どの小説も読みやすかったです。一目惚れのお話は読んでいてこんな一目惚れの仕方もあるのかと感心しました!リクエストの件、ご無理はなさらずに形に出来そうであればお願いします!! (2021年8月6日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» ぇええ?!全部読んで下さったのですか…?!(;-;)貴重なお時間を私の小説に割いて頂いて…う、嬉しすぎます…!本当に幸せです、ありがとうございます(;-;)一目惚れのお話も読んで頂けて幸せです…!リクエストのお話もいずれ形にできるよう、頑張りますね!^^ (2021年8月6日 7時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - reさん» 読んでいてお互いの気持ちを考えているのが分かるのでキュン死するかと思っています(因みにreさんの小説は全部読破しております/リクエストした際に言っていた降谷さんの一目惚れの小説も読みました) (2021年8月5日 21時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 真実さん» 真実さん、コメントありがとうございます…!2人の、お互いを大切に想う気持ちを伝えられているのなら、私はとても幸せです…(;-;)とても嬉しいお言葉、いつもありがとうございます…!2人の幸せのために、続編も引き続き頑張りますね!^^ (2021年8月5日 19時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
真実(プロフ) - 夢主には夢主の苦悩、降谷さんには降谷さんの苦悩と言うものがreさんの小説から痛いほど伝わってきますね。けど、それはお互いを大切に思っての事だと思うと切ない気持ちになります。続編も楽しみにしてます!! (2021年8月5日 13時) (レス) id: 19057a7d80 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:re | 作成日時:2021年7月25日 15時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。