17、緩くて重たい鎖 ページ17
前の世界の記憶も思い出せないまま。そして、この世界に私の存在証明も…ない。
降谷さんが私を生かしてくれたのは、嬉しい。
でも私…これから、どうしたらいいの?
そんな不安が伝わったのか、彼は私に笑いかけてくれた。
「A。そんな顔しなくていい」
「…」
「戸籍なんか、適当に作ればいいだけだ。簡単だろ」
「…う、うわぁ……」
サラッと言いましたね、この人。そんな所も大好きです。
彼は、ケラケラと笑ってから…安室透のキラキラ笑顔を作った。素敵。
「何引いてるんですか。その為にわざわざ僕を頼ったんでしょう?……盛大に転ぶほど、走って追いかけてまで。」
「うっ……まぁ、そんな所…なんですけど…」
確かに、" 公安警察だし、あわよくば…! " なんて思ってました。すみません。
降谷さんはエスパーか!
また楽しそうに笑った彼は、握っていた私の手を布団へ戻した。
「まだ、身体がつらいだろ」
「…」
「すまない……少し、強い薬を飲ませたから」
え、あの……まさか、組織の薬…とかじゃ、ないですよね。
わはは!
…それは怖すぎる。
じっと彼を見つめていると、突然私の方へ顔を近づけながら、大きな手のひらで目隠しをされた。
……真っ暗だ。
状況も分からぬまま大人しくしていると、ふわりと彼の香りがして。次いで柔らかな髪が首筋に触れる感覚に、心臓が跳ねる。
「…な、に……っ、ん、ぅぁ」
私の首に唇を寄せたらしい彼が、突然そこを強く吸った。
それでも、頭がぼんやりしたままの私はすぐに反応できなくて。
目隠ししていた手を外した直後、青く綺麗な瞳と視線が絡んで…息が、詰まる。
彼はすぐに顔を上げ、赤い痕がくっきりと付いたであろう喉元をそっと撫でて……ほんの少し、笑った。
「ゆっくり休んで」
「降谷、さん…」
「おやすみ」
おいおい、なんて目立つ所に痕を付けてくれたんだ。これじゃ恥ずかしくて外に出られないわ!
って……わざわざそんな事しなくても、勝手にこの家を抜け出したりしないのに。
私には、貴方の他に頼れる人も居なければ…行き場も、ないんだから。
「……おやすみ…なさい」
彼は、ほんの少し…私を信用しつつあるようだ。
私の首の…この印は。
この場所に私を留める為の、彼なりの " 緩い鎖 " みたいなものだろうと。
再び深くへと落ちていく意識の中、考えた。
繋がってもいないような……
けれど、私にとっては酷く重たい、鎖だ。
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re(プロフ) - みおさん» みおさん、このお話にお付き合い下さって、更に温かなコメントまで……!!本当にありがとうございます…!✨好きだと言って頂けて、とても嬉しいです😭✨✨書いてよかった〜!(*^^*)ありがとうございます! (2022年6月3日 10時) (レス) id: 6b9303296e (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - 本当に最高です!!話の内容が好きすぎます!!素敵な作品ありがとうございました!! (2022年5月21日 13時) (レス) @page36 id: 98c132f21e (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - 金糸雀さん» 金糸雀さん、コメントありがとうございます…!!本当ですか…(;-;)文章を褒めて頂けるなんて…幸せすぎます…!!続編まで希望して頂けるなんて…このお話を書いて良かったです!!本当にありがとうございました!^^ (2021年7月30日 8時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - え、好きですこの作品!!文章の表現技法がとても素敵でキュンキュンしながら読ませていただきました!お時間がございましたら、続編を書いてほしいですっ!! (2021年7月29日 21時) (レス) id: e5f7c718e0 (このIDを非表示/違反報告)
re(プロフ) - お米。さん» お米。さん、最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございます…!嬉しい言葉の3連続…!笑 ありがとうございます…!萌えて頂けて幸せですが、どうか、死なないで…笑 温かなコメント、ありがとうございました^^ (2021年7月8日 10時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年7月1日 7時