87話 ページ20
何度呼び掛けても、誰彼構わず襲ってくる白狼のAさん
「(暴走してるのか！？一体、どうしたら…！)」
興奮状態になり大きな身体を振り回して暴れるその姿は、まるで狂犬。目の焦点すら合わない
「ｺﾞﾎｯ、コビー！、中将を落ち着かせられるか…！？」
「え！！？あの状態をですか！？？」
「お前しかいねぇ…！俺が援護する、A中将の目を覚ませてやれ…！」
ここまで、必死なヘルメッポさんは初めてだ。ヘルメッポさんもAさんに帰ってきて欲しいんだ
こんな所で諦める訳には行かない
「分かった…！！援護して！」
ヘルメッポさんがAさんの気を引いているうちに、白狼の背中へと飛び乗る
耳の方へ寄ろうとした時、バナーに邪魔をされる
「どうして邪魔をするんだ！、Aさんがどうなってもいいのか、？！」
「…いいさ。もう、どうにでもなればいい
俺の目的は、お前らが死ぬところを見せること。あ、でも、そうか…。自分で殺した事を後に自覚させるのも悪くないな」
『グゥアﾞアッ…！』
僕らが背中にいた事に気付いたのか、至る所に身体をぶつける
「Aさんｯ！目を覚まして下さい…！」
必死に呼びかけるも反応無しで暴れ続けるAさん。本当にどうしたらいいんだ…！
バナーを見るとAさんの愛刀を手に、鞘を抜きAさんの首元に突き刺そうと構えている
「この刀も本来なら俺が受け継ぐ筈だったのに…！」
「ｯ！！やめるんだｯｯ！！！」
ｻﾞｼｭｯ
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿ｯ！！！
「ゔｯあ…！！」
あまりの悲鳴に耳を塞ぐ。聞いていると気が遠くなるような、声にならない声
「ははははｯもっとだ…！、もっと苦しめｯ…！！」
その刀で滅多刺しにするバナーに、後から突進し白狼の背中から一緒に降りる
『ｺﾞﾌｯ…！ガアﾞアァ』
大量の血を流し、明らかに弱っているAさん
もう、限界だ。、、
「もう、。辞めましょう、これ以上Aさんを傷つけないで下さいｯ……ライラさんが死んだのはAさんのせいじゃない…！ハリルだｯ……！！」
僕も見たわけじゃない…だけど分かる。Aさんは、あの時の事をずっと心の中で引きずってる
ずっと隠れて苦しんでいるんだ
「バナー、君も辛かった。だけど、目の前で親友を殺され仲間に1人置き去りにされたAさんも辛かった筈なんだ…、」
僕たちが倒すべき存在は1人、ハリルだ
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作者名：夛湖 (たこ) | 作成日時：2023年11月6日 22時
