海の猟犬2【onepiece】 (ページ33)

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62話ページ33

僕達はただ静かに、涙する少女の言葉に耳を傾けた

「旦那様は、とても偉い貴族で他の人とは違って心優しい人だったの。貴族だから、庶民だからの線引きをとても嫌っていたわ」

ぽつりぽつりと、俯きながら言葉を紡ぐ

「いつか、皆で仲良く楽しく過ごせる交流の場を作りたいと協力者を求めて、話を持ちかけていたの。それが、気に入らない他貴族や天竜人が旦那様を追放した…！」

唇を噛み締めるように話す少女を僕は、もう哀れみの目でしか見れなくなった

そして何も知らずこの城に追放された旦那様と、出会ったと言う

「旦那様は、化け物の私にも優しかった。醜い人の憎悪の塊のような私にさえ…。好きになるなんて簡単だった

いつしか、この人の夢を叶えてあげたい。そう思うようになった」

「でも、実現は出来なかった、？」

そう問いかけると、小さく頷く

「一緒に夢を叶えようと駆け出した時だった、旦那様が殺された…、私の知らない所で痛め付けられるように

どうして、あんなにも優しい人にそんな惨い事ができるの？」

『貴族や、天竜人なんてそんなもんだよ。その旦那様が特別、人の心を持って生まれてきたんだ』

今まで静かだったAさんが、吐き捨てるように呟く

少女の今まで押し止めていた感情が、溢れ出すかのように顔を両手で覆い、会いたい…会いたいのｯ！と涙を流す

正直、、僕ができる事なんてあるのだろうかと悩んでいる

心優しい彼が生きてさえいれば、少女もこんなに人を恨むなんて事はなかったはず

悪いのは、人と人との一線を越えようとしなかった人間達

『……会えるよ。君さえ、成仏してくれればね』

少女の泣きすする音だけが聞こえた空間で、Aさんの凛とした声が響いた

『革命軍が、この城含め島ごとを吹っ飛ばすつもりだ。勿論君の事もね。君も、こんな場所があるから離れられないで、人を呪い続けてしまうんだ』

もう、自由になって向こうで待ってる彼に会いに行きなよ。そうAさんに言われると、うるうるとまた泣き出した少女

「貴方達には酷い事をしてしまったわ…ごめんなさい。まだ、人を好きにはなれないけど貴方達と出会えて本当に良かったと思う」

あなたの言う通り私はここで、静かに最後を迎える事にする。、そう言っては黒い霧も綺麗に晴れヘルメッポさん達と合流できた

合流しては、少女を残して僕達は出口へと向かって走り出した

「…いい人達だった、かも…。もうすぐ、お傍に行きますね旦那様」