海の猟犬2【onepiece】 (ページ32)

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61話ページ32

やはり、僕に股がってきたのは偽物だった。ほんの一瞬でも、本物だと思ってしまった

Aさんが来なければ、殺されていたの思うとゾッとする

「かはっ…！ぐふっ…、ゆるさない…ｯ」

まだ、Aさんの姿のまま此方を睨んでいる

『…目障りなんだ。僕の姿、辞めてくれない？』

余程嫌なのだろうか、今まで見た事ないような表情で殺気を放っては、青筋まで立てて怒っている事が分かる

怖い…、恐ろしく怖い
今僕は本物のAさんの足元で、片膝立てで呼吸を整えているのだが、プレッシャーによる圧力が凄い

「はぁ、はぁ、くふふｯ辞める訳ないじゃない…！
貴方こそ平気なの？自分で自分を殺そうとしているのと同じなのよ？」

『そんな煽り、僕に通用しないなあ』

凄まじい速さで、偽物に近づいては先程のナイフをもう一度構えるAさん

僕から見れば、Aさん同士が殺し合いをしているようにしか見えないのだ

苦しい、……心が痛い

「…ば、馬鹿ね！貴方、自分に刃物を立てる行為はその者の精神を傷つける事になるｯ…、貴方本当に平気？笑」

偽物の血で汚れて、所々が赤く染っているAさん

そろそろ止めてあげないと…、！

「Aさんｯ、！も、もう落ち着いてくださ…ぃ、
み、見て下さい！偽物もきっと、反省していますよ…！」

だから…ｯ！

『ふーん、何？』

ひゅっと息が抜けた
こんなにも冷たいAさんは、初めてだ

だから、辞めて欲しい。その一言が怖くて言えない

続けて、偽物を痛め続けるAさん
これじゃ、、まるでAさんが悪人だ。そんなの嫌だ

「ｯもう、辞めてください！！！もう、十分じゃないですかｯ！！相手も、もう戦意喪失しています！このままだとAさんが、罪人になってしまいますｯ！！」

偽物の胸倉を掴んで、静止するAさん
口元は、軽く微笑んでいるが目は全く笑っていない

「ご、ごめんなさい…！ゆ、許して…、、」

『…僕さ、実は言うと自分ってあまり好きじゃないんだよ。好きじゃない自分が、部下を殺そうなんて事を見てしまったら我慢出来なくなった』

怖がらせたね、ごめん。と胸倉を雑に離し土埃を払うAさん

蹲っては震える偽物が、徐々に少女の姿に戻っていく

「ご、ごめんなさい…、私、私本当に旦那様に、会いたくて…、この島に訪れた人を旦那様に仕立てあげたりして来たけど、それでもダメだったの」

しゃくりあげて泣く悲しい少女がそこには居た