59話 ページ30
青筋を立てて、中将に殴りかかる少女
もう、可愛らしい要素なんてひとつも無い
『うはっ、こわ〜笑。可愛い顔が台無しだ』
「殺す殺す殺すッ!!」
相変わらず、攻撃を避けるだけの中将
それが少女にとって余計腹が立つのだろう
『もっと遊びたいけど、時間が無いからここまでにしようか…なッ!!』
勢いをつけて回し蹴りを少女にお見舞いする
壁に打ち付けられた少女は其の儘ダウンしたようだ
「…ッ!」
「ヘルメッポさんッ!僕が分かりますか!?」
少女が気を失ったからか、目を覚ましたヘルメッポさん
目の色も元の色に戻っている
良かった…、
「あ、嗚呼。って、一体何なんだ!?ここ!?」
「良かった…本当に良かった…!」
『やあ、おかえり。さっきの僕の言葉覚えてる?』
中将の質問にたいして、?を浮かべるヘルメッポさん
それを見て、『分からないならそれでいいんだ』と何事も無かったように、笑って誤魔化す
「(さっき、ヘルメッポさんにとってまあまあ失礼な事言ってたもんな…事実なんだけど、)」
『よし、全員いるね。時間が無いから、アレが目覚める前にここから出るよ』
イヴさん含め、一人一人の顔を確認して扉を出ようとした時だった
バタンっ!と扉が閉まる
気づくと、あの少女が俯きながらゆらゆらと後ろで立っていた
「ねぇ、私がこの島の化け物って言われる理由知りたくない?だーれも、その姿を知らないって言うのも気になるでしょ」
『僕は、気にならないかな』
また、無駄に相手を怒らせるような発言をする中将
「(もう、やめましょうよッ!!)」
「ふふ、貴方は本当に人を怒らせるのが得意なのね。
いいわ、今すぐ殺してあげる。みーんな、仲良くね」
そう彼女が言った瞬間、黒い霧が僕らを包み込んだ
器官に入って噎せる
目を開けると、僕以外の誰も居なかった
気配は感じるので近くに居ることは分かった
僕に戸愚呂巻いた黒い霧が徐々に形を変えて、その姿を露にした
好意を寄せながらも実は、ある恐怖の対象である相手を前に立ち竦む
「Aさん…、」
僕の呼び声に反応し振り向いては、にまぁっと笑う
何処か狂気じみてる
僕はAさんと戦うのが怖い
元海賊でありながら、中将の座まで上り詰めた実力
優しい普段の様子から垣間見える無の表情
心の片隅で感じていた怖さ
ゆっくりと僕に近づいては、肩に手を置き耳元で小さく
『ふーん、僕の事、、怖いんだ』
まるで蛇に睨まれた蛙のように動けなかった
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作者名:夛湖 (たこ) | 作成日時:2023年7月30日 0時