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「しょ…うくん…？」
見間違いようがないんだけど唇を割ったのはそんな自信なさげな蚊の鳴くような声声、言葉で
また笑いながら彼は「じゃなかったら俺は誰だよ」ふふっ なんてカウンターから出てきて雑貨の並ぶディスプレイを弄った
「いつ戻ってきたの？」
連絡…なにもくれずに行っちゃったのに…
戻ってくるなら…わたし待って…
「先月こっちに戻ってきた！
仕事辞めてさ、好きなことしようと思って」
相変わらず配置換えを数センチ感覚で弄りながら視線の先を愛おしそうに眺める彼に
"嗚呼、好きなものに囲まれて、好きなことに没頭する…変わっていない彼だ"とわたしは心の中で気付いてしまう
「久しぶり…だね、
Aは元気？えっと…結婚、しちゃったか」
なんで…？
一人で勝手にいなくなってわたしを置いていったのは翔くんなのに…
なんでそんな悲しそうな瞳をするの？
ずるい…
翔くんの視線の先にあるわたしの左手の薬指に光る華奢なリングを一瞬でも疎ましく思ってしまったことに後悔の気持ちがまだあるから
ここで引き返したら、もう…ここに来なければ
まだ雅紀との平凡な幸せが続けられるのかもしれない…
.
終わり
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作者名：しろねこ
| 作成日時：2015年10月29日 4時
