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正直「誘いに行ったんだけど」の時点で少し拗ねた様ならんちゃんの声色と、珍しく暗い表情で予想は着いていた。
今日のお昼休み。と言うとわたしは最近入社した何故か絡んでくる後輩に言い寄られていた。正直言って気持ち悪いし、なんか口から出てくる言葉一つ一つが「AVの見すぎか？」と煽りたくなる程に臭い台詞ばかり。同じ台詞らんちゃんが言ってくれたらカッコいいのに。と現実逃避するほど参っていた。
歩いてきた場所はもうほとんど人通りの無い場所になっている。
「わたしの嫌いな後輩」
「ほんとに？」
「ほんと」
「もし嘘吐いてたら俺Aの事怒っちゃうかも」なんて言いながらわたしの顔をまじまじと見つめてくるらんちゃん。
「らんちゃん怒るの？」
「そりゃ俺だって…日々怒るよ」
「ほんとに？」
「ほんと」
「だってね」と言葉を続けながら傘を持っている方の手とは反対の手でわたしの髪を撫でたらんちゃん。
これはまずい。まずすぎる。こんな道端でらんちゃんのダメな方のスイッチが入ってしまった。まずい。
「俺、その後輩にすっごい怒ってるよ。俺のAにべたべた触れちゃったりしてさ、」
「ら、らんちゃん」
「ひとらんって呼べよ」
らんちゃんの口調が荒くなった。これは終わった。
せめてもの制止にらんちゃんの胸元を手でとん、と押す。「まだダメだよ」の意味を籠めて。その手をもらんちゃんに捕まれてしまった。傘が地面へと音を立てて落ちる。
その落ちた傘へと意識を向けた瞬間、わたしの首へと顔を埋め、喉仏に噛み付かれる様にキスをされる。それはもう、噛み切られると錯覚する程に。
ちゅ、ときっとわざと音を立てながら、満面の笑みのらんちゃんがわたしの喉元から離れる。
「続き、家でしてもいいでしょ？」
「……はーーｯ」
そんな顔、ズルい。
「待ての出来ないじゃじゃ馬め…」、なんて呟きながら落ちた藍色の傘を拾った。
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