▽ ページ28
偶然居合わせた私に…というよりは、私が居るだろうか、と図書室に足を運んだということは。
それはもう疑いようもない、シッマくんは私を好いている。
私が唇に手を当てたりしたから、察されたと思ったのだろう。想像はしたがまさか自分だとは思わなかった。
失恋なんてしなかった。むしろこの想いは報われるらしい。
「ね、あのさ」
「いやほらあれだよ、だからって」
「もう一回して」
更に言葉をつづけようとしていたシッマくんを遮って、大きめの声で言った。
休み時間が残り何分かなんて知らない。ただ、もう図書室に居るのは私たち二人だけになってしまっている。
「それ、…ええんか」
「……そういう、ことだから」
恥ずかしくなって目を伏せる。
「私が知らない間は、ずるいじゃん…」
そのままきゅっと目を閉じた。姿が見えなくても息遣いは聞こえて、すぐ近くにシッマくんがいるのがわかる。
靜かな図書室に私の心臓の音が響いてしまうような錯覚を覚えた。
少しかさついた唇の温かさが触れる。
「なんやこれ恥ず、」
「あと5分で昼休み終わりで、す……」
司書室から出てきた司書さんが、私たちの距離を見て驚いている。
「す、すぐ出ます！」
でもその前に。
「これ借ります」
雑誌をカウンターに置く。
「あっお前それ！」
「雑誌の貸し出しは1日だけになるけど大丈夫？」
「はい！」
絶対じっくり読もう。だって、「あながち間違いじゃないかもしれない」らしいのだから。
【唇へのキスは深い愛情の証！特別な存在じゃないと出来ないキスです♡】
愛を知らないだとか言われていたシッマくんだけど、私だって正直わかっていない。
でも今は、そんなに難しく考えなくともー…お互いが少し特別だってことだけで十分だ。
「多分それが愛なんちゃうか、知らんけど」
おしまい！
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