▽ ページ26
「こんなもの気になるんやな、なるほどね」
「いや別にっ、そもそも彼氏いないし」
偶然開いてしまっただけなのだ、まともに読んでもいない。タイムリーではあったが、その後ふて寝して今に至る。
「でも、それって、合ってるの？」
まだ雑誌を眺めているシッマくんに対して、小声でそう訊ねてみる。なるべく軽く、何の気なしに訊いたようなトーンを意識して。
お昼に聞いたことを知らない方がよかったなんて思いながらも、深く知りたいと思ってしまう。傷つくだけなのに。
「わからへん」
回答は予想外のものだった。もやもやしたままの私は食い下がる。
「でもほら、お昼に話してたから？」
「あれ聞いとったんか、嫌やわー！なんか普通に恥ずいわ」
「聞こえちゃったんだって」
決して聞いていたわけではないとアピールした。勿論嘘だ。
「いや、あれはなんていうか、ちゃうよ、ちゃう。大先生があんなこと言うからやん！」
「じゃあしたことない？」
「あるわ」
「あるんじゃん」
今の流れだと嘘だった、という話だと思うのが普通だろう。上げて落とされた気分だ。
「でも相手に意識がなかったからね」
「え？」
相手に意識がないってなんだ。脳裏をよぎるのは白雪姫的な映像。
「死体…？」
「ちゃうわ！」
とっくに図書室で話すトーンではなくなってしまっている。
昼休みはまだ15分程度残っているが、元々過疎だった図書室は更に人気がなくなっていた。
「そういう趣味なわけないやろ！あー、ほら、うん」
別に私に話す義務も何もないのに、言葉を必死に選んでくれているらしい。
「相手寝てたからね、うん」
寝込みを襲ったらしい。
相手を好いていないとやらない行動だろう。
「それって彼女さん？」
「いや？」
しかも彼女ではない相手にだ。
つまり彼が彼女を作らない理由など一つしかない。好きな人が居るのだ。
相手が寝ているときにキスしちゃうくらいの相手が。
そこでふと思い出す。さっき私が起きた時も、…かなり顔が近かった。
いや、だれこれ構わず寝込みを襲っているわけがない。変な妄想だ、振り払わなくてはいけない。
無意識に私は自分の唇に触れていたらしい。それに気付いた時には、正面に居るシッマくんが頭を搔いて口を開いていた。
「いや！いや！待って？あれだよほら、無防備に寝てる方が悪いんちゃうか、うん」
「無茶苦茶だよ！？」
どういう理屈だ。シッマくん相手だと羨ましいが、それは恋愛感情込みでの話だ。普通に考えるとテロだと思う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 111人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
