▽ ページ25
多分失恋した。確定はしていない。
彼女は作らないというのが本当で、最近キスしたという話も本当だとしたら、…爛れた関係しか想像できない。
たまにシッマくんに会えるからと、昼食後にこっそり通っている図書室。今日も懲りずに足を運ぶ。
今日は分厚い本を読む気になれず、カウンター付近にある雑誌を捲った。
『キスされる場所でわかる！？カレの心理！』
そんな見出しが視界に飛び込んで来る。タイミングは最悪だった。当然溜息も出る。ここに居ることも馬鹿らしくなって、そのまま机に突っ伏した。
窓際の席はぽかぽかと温かく、眠ってしまいそうになる。何も考えたくなくて目を閉じた。
「また昼寝してるやん」
どのくらい目を閉じていたのだろう。シッマくんの声が聞こえた気がして目を開けた。
「シッマくん……？」
「起こした？そんな大きい声出したつもりなかったんだけどね」
目の前にシッマくんがいて、私の顔を覗き込んでいた。恥ずかしい、寝顔を見られてしまったかもしれない。
そう思うと顔に熱が集まっていく感覚がする。それに、顔が近いのだ。この距離だと、まるで、
キス出来ちゃいそうだ、とか。
浮かんだことを打ち消すように頭を振った。考えてはいけない。今日の昼休みの会話だって、何も聞いていないことにしたかった。
知らないまま淡い恋心を抱いていれば、今だけはきっと幸せだ。
「前もここで寝てたやろお前。昼休みやし眠くなるのはわかるんだけどー…雑誌？」
以前も見られていたらしい。更に恥ずかしくて何も言えずにいると、シッマくんの手が机の方に伸びてきた。
その先には開きっぱなしの雑誌。
「あっそれは！」
はっとして隠そうとしてももう遅く、雑誌はシッマくんの手に渡ってしまっていた。
そうなってしまうと、隠そうとした行動自体がやましいことがあるリアクションのように見えてしまう。
「えーっと、『キスされる場所でわかる！？カレの心理！』…？」
音読しないでほしかった。
「なるほどねぇ」
そしてしみじみ呟かないでほしかった。
シッマくんは雑誌を離さない。私とてじっくり読んでいないそれを、隣に座り読み始めた。
「『本当に私のこと好きなの！？そう不安になることってありますよね！』」
「ねえ音読しないで」
「『自分が彼に愛されているかどうかは、キスしてくる場所でわかります！』」
「しないでって言ってるじゃん！？」
ぐいぐいと袖を引く。大きな声を出しているせいで周囲から若干の視線を感じた。
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