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彼が私の前髪を微笑ましそうにいじくる。指でボールを転がすかのようにさらさらと流したり絡めたりして遊んでいる彼に私はそろそろやばいんじゃないの、とことばをもらす。
その言葉を聞いた彼はいつものように、いつもするみたいに、慣れた手つきで指先で私の髪を1束ずつ持って耳にかけていく。耳が見える程度に髪をかけ終えた彼は私の髪の生え際を綻んで、頬がゆるゆるとしている顔でなぞる。そんな顔されたら誰だって勘違いしてしまうと心の中で悪態をつきながら恥ずかしさとその気持ちを隠すかのようにスっと瞼を閉じる。
まぶたを閉じた私を見て彼はゆっくりと私の耳に唇をちかづける。鼻先と口先が私の耳にひうとあたる。いつもされているが今日は一段と恥ずかしくて拳をぎゅっとにぎりしめる。彼はそんな私を気にもせず耳に甘く、赤子のように吸い取るかのようにきすをした。耳に直接響く音に顔を赤らめながら私は彼に震えた声で、ほらと急かすように言う。
そんな私を見た彼はにやっと愛しいものを見るかのような目で私に別れを告げる。
別れを告げたあと私はおおげさに溜息を吐きだす。私はずっと悩みに悩んでいた。毎回耳にキスをしてくれるシャオロン。何か耳のキスは大切な意味があるのかと思って調べてみたら耳のキスの意味は誘惑とその本にはしるされてあった。そこで私は思ってしまったのである。彼は私を誘惑して怪盗として、宝物を盗むだけのために、利用するためだけに今こうしてメイドという王国側の人間とお話をして、感謝を伝えるためにきすをしてくれてるのではないのだろうかと。
だけど私はそれでよかった。否そんなことどうでもよかった。そんなことを考える余裕もないほどにシャオロンのことが好きで好きでたまらなかったのだ。ちらちらと散りばめられた綺麗な琥珀色宝石のような目を持ち、私と言葉を交わす事に表情が移り変わり花が満開に咲くかのように微笑んだり、もちのように顔をふくらませて怒ったりする表情豊かで、女の私よりもどこか華奢でだけどちゃんと筋肉が付いていて力持ちなシャオロン。心が痛いほどに、悔しいほどに大好きで大好きで堪らないのであった。
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