ずっとこのままで…8

私なりの【家族】 ページ43

「皆さんがこれから作るのは、世界一のﾊﾟﾝｹｰｷです。」



会場からどよめきが起こる。


「家族でする食事で一番幸せなのは、そこにみんなが揃っていて、子供達からは楽しそうな声が上がり、親はそんな子供達の将来を考えながら笑い合える事だと思っています。
皆さんも一度はお子さんと一緒に何かを作ったりした事があるでしょう。
その時の表情を、言葉を、覚えていますか？
今だけは審査員ではなく、1人のお父さんとして、1人のお母さんとして、お子さんと一緒に世界一のﾊﾟﾝｹｰｷを作ってみて下さい。
私はそのお手伝いをさせていただきました。
それではよろしくお願いします。」


子供達は一斉に「一緒に作ろう！」と声を掛け始めた。
審査員の方達は最初こそ戸惑いの色を見せていたが、子供達の楽しそうな表情に次第に笑みがこぼれる。
会場もﾓﾆﾀｰに映し出される光景を見て和やかな雰囲気に。

出来上がったﾊﾟﾝｹｰｷを親が切り分け、一緒に口にする。
子供達はもっと作ろうと騒ぎ、それを見て親は笑う。


私が思い描いていた理想の家族が目の前に10組居た。



こんな家庭が築いていけたらいいな…

ねぇ、研二…



客席に視線を向けると、研二は満面の笑みでVｻｲﾝをしてくれた。

私、精一杯やったから。
これで結果がどうであっても全てを受け入れるよ。




全ての試食が終わり、そのまま採点に移る。

審査員の方達から私達4人に向けて賛辞の言葉が向けられ会場からは拍手が。




そしていよいよ得点の発表。

まずは審査員10人。




【ﾊﾟﾘ：98点】




会場からは大きなどよめきと歓声が上がる。




【日本:97点】




1点差……
って事は…子供達の票で…全てが決まるって事だ。



会場も緊迫した雰囲気になり、次第に静かになっていく。

司会者の人が「それではお子様方による判定です」と意を決したように声を出した。




どうか………




私は祈るように手を合わせ目を閉じた。




次の瞬間。





ﾜｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧｧーーーーー！！！！！





地鳴りのような歓声が上がり、私は目を開けた。



私の目に映ったのは…






【子供達：青0、赤10】






赤いﾎﾞｰﾙを高々と上げ、私に手を振ってくれる子供達。

審査員も観客もみんなが立ち上がって拍手をしてくれている。





嘘……っ……

私………勝ったの？

…優勝したの？





「……っ……うゎぁぁぁぁぁー…」





私は両手で顔を覆い、壇上で泣き崩れた。

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