Prologue ページ1
｢……はぁ｣
季節は春。桜ももうすぐ舞い始める頃だろう。
なお、部屋からはそんな風景は見えない。
見えるのは、庶民……と呼ばれる人達が働く様子だけ。
｢失礼します、昼食をお持ちしました｣
｢……ありがとうございます｣
ノックの音と続く足音に振り返る。
サイドテーブルに銀のトレーが置かれた。
トマトのリゾットにクラムチャウダー、ほうれん草とチーズのキッシュ、飴細工のような何か。
いつもの、と言うほど見飽きたものが今日も並んでいる。
給仕係は何も言わず部屋から去る。これもいつもだ。
彼とはほとんど話したことがない。
機械的な受け答えしかしないから、いつしか話しかけるのをやめたのだった。
用意された食事に手をつける。
不味くはない。
……それでも、圧倒的に何かが足りなかった。
半分かそこいらで食べ進めるのをやめ、そばに置いていた本をまた開く。
淡く、誰に気づかれることもなく瞳が緑色に変わる。
今読み進めている本は数学の本で、珍しく親にねだって買ってもらったものだ。
親にねだったのは、それが最初だったが。
何度読み返しただろう、手垢も折り目もつきまくっていた。
そんなことをしてしまうぐらい、毎日は暇なのだ。
必要な時、必要な人が来て、必要なことをするだけ。
外には滅多に出ない。
親には｢外に出たら風邪を引いてしまうから｣ときつく言いつけられている。
たくさんの景色も、トイレに行く時ぐらいじゃないと見られない。
病弱、とは思わない。
それなりにご飯だって食べてるし、風邪も半年に１回引くか引かないかぐらいだ。
つまるところ、両親は過保護すぎるのだ。
外に出たいと言ったところで叶えてはくれないだろう。
大人になれば分かる、とは言われても。
｢……もう大人だよ、俺｣
18になった今でも、屋敷の中と辛うじて庭に出るくらいまでは許可された。
ただ、それだけだ。
死ぬまであの人たちは俺をここに閉じ込めておくつもりなのだろうか。
そんなの、嫌だなあ。
読んでいた本を特に思うこともなく足元に放り投げる。
重量を持った音は、虚しくも部屋だけにこだまして、そして消えていった。
こんな日常、壊れてしまえばいいのに。
数日後、このつまらない日常が本当に5人の男たちによってぶち壊されることになるとは、想像もしていなかった。
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麗華(プロフ) - まる。さん» お読みいただきありがとうございます〜！リクエストの件承りました。お時間頂きますがお待ちください！ (2020年3月28日 0時) (
レス) id: 6d73d63d08 (このIDを非表示/違反報告)
まる。 - とても面白く楽しいお話をありがとうございます！リクエストをお願いしたいです。緑さんが女装し、みんなで可愛い緑さんをかわいがる！そんなお話を読みたいです。 (2020年3月28日 0時) (レス) id: c760cb06e2 (このIDを非表示/違反報告)
パイナップル(プロフ) - 無理なお願いしてすいません！これからも頑張って下さい！ (2020年3月27日 22時) (レス) id: ec2780e711 (このIDを非表示/違反報告)
麗華(プロフ) - パイナップルさん» 分かりました、なんとか組み込んでみますね( *・ω・)ノ (2020年3月27日 22時) (レス) id: 6d73d63d08 (このIDを非表示/違反報告)
パイナップル(プロフ) - はい！お願いします！ (2020年3月27日 22時) (レス) id: ec2780e711 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：麗華 | 作成日時：2020年3月7日 2時
