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「....ん、」
ゆっくりと瞼を開け、まだ薄暗い部屋で携帯の画面を確認する。....朝の五時半。こんな早くに自然に目が覚めた事に違和感を覚えつつも、身体を起こして最初に浮かんだのは『お腹が空いた』だった。
なんでやろ、普段は朝から食欲沸くことなんてほぼ無いのに珍しいな....と思いながら洗面所に向かおうとして、思わず「あ、」と声を漏らす。
流しに置かれたままの食器たちと、その隣に置かれたビニール袋....の中に入ったままの、弁当。
....当然、空腹で目が醒める訳だ。
自分に呆れつつ洗面所に向かって、顔を洗いながら脳内を整理する。
昨日は確かにあらゆる事が起こりすぎて、混乱しまくったけれども。....とはいえ、飯を忘れるほどやったかな....。
使い終えた歯ブラシを置いて、そのまま台所に戻り弁当を温めて。
そのあとは確か、ソファに戻ってそれを食べたり、昨日から窓際に干しっぱなしだった彼女の衣類を畳んだりして過ごした気がする。
八時頃、寝室に顔を出すとAは目を覚ましていた。
すっかり熱も下がった様で、食欲はある様だったので冷蔵庫の中身で適当に朝食を作って出した。
数時間後、車の助手席にAを乗せて走り出す。指示通りに運転して辿り着いた彼女の家は、平均よりも裕福な家のそれで。親御さんに怒られたりせぇへんかな....なんて思ったけど、Aは「この時間は大抵家には居ないので」とどこか哀しげに笑って車を降りた。
来週になればまた会えるのに、その背中がなんだか遠くに行ってしまいそうな気がして、助手席の窓を開けて「A、」とその名前を呼んで呼び止める。
「?何ですか先生」
「あー....いや、月曜までに治ったらええけど....。無理はせえへんようにね。お大事に」
「はい。....色々ご迷惑お掛けしました。」
ぺこりと律儀にお辞儀をする彼女に「そんな気にせんでええよ。」と笑って、車を動かす。
車が曲がるまでそこから見送ってくれた彼女の表情は確かに笑顔だったはずなのに、どこか曇っていた様な気がした。
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らぱん( ・×・ )(プロフ) - 辰海恋歌さん» コメントありがとうございます! 曲通りに終わらせましたが、この先きっとこの二人は幸せになってくれると思います!こちらこそ楽しんで頂けて嬉しいです、最後まで読んで頂きありがとうございました! (2019年4月8日 7時) (レス) id: 4213176f5b (このIDを非表示/違反報告)
辰海恋歌(プロフ) - 完結おめでとうございます。一言言えるのは、この中では、あの子が曲名通りになれて良かった…ということです。素敵で、もどかしくて、そして温かい作品を、本当にありがとうございました。読んでいてとても楽しかったです。 (2019年4月7日 23時) (レス) id: b18219f6f9 (このIDを非表示/違反報告)
らぱん( ・×・ )(プロフ) - てこゆのさん» ありがとうございます!私も似たような現象起こるのでお気持ち分かります(笑)でもこうしてコメントして頂けるだけで嬉しいです、ありがとうございます! (2019年4月1日 11時) (レス) id: 4213176f5b (このIDを非表示/違反報告)
てこゆの(プロフ) - 完結おめでとうございます!!つい最近になってこの小説を見つけたのですが、読み始めた瞬間から引き込まれてしまいました。他の方のように何かしっかりとした感想を書こうとしても、あまりにも素晴らしくて言葉が出てきません...!胸がいっぱいです!! (2019年4月1日 9時) (レス) id: 5d44cadab1 (このIDを非表示/違反報告)
らぱん( ・×・ )(プロフ) - Rinさん» 最後まで読んで頂きありがとうございます!クオリティ高くなってますでしょうか、嬉しいです....!曲への愛を詰め込んだ結果こんな感じになりました(笑) ありがとうございました! (2019年4月1日 7時) (レス) id: 4213176f5b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:らぱん( ・×・ ) | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/personal.php?t=d9fece3f785bc7d3ebaeeecd6103e95f...
作成日時:2019年3月19日 18時