一番にはなれない【💛】 (ページ21)

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そうしてそれから三日間、放課後に社会科の資料室に通った。

資料室の中にある長机。パイプ椅子を二つ並べて、先生と隣同士に座って教科書とノートを開く。
これまでの授業の振り返りをしながら、ここは割と忘れられがちだとか、この三人の名前はセットで思えておくと良いとか、わかりやすく教えてもらって。そうして大体一時間ほどの勉強の後に、先生は紙コップにストレートティーを注いで出してくれた。

そうして二人でコップから紅茶を飲みながら、少しだけ話をする。やっぱりその距離にドキドキはするけれど、三日間でかなり慣れて話しやすくなったのを覚えている。

....そしてこの時にわかったこと。折原先生は、私があの時学校まで案内をした女子生徒だとは思っていないようだった。
あの直後から髪型やメイクに気合を入れたのを後悔したけれど、後から考えれば人見知りを発揮して終始俯いていたからかもしれない。

それでも、その時よりもずっと沢山の話をした。....あの時よりも、会話らしい会話になっていたはずだ。その中でも、はっきりと覚えている話があった。....確か二日目の、本当に帰り際の数分の話。

「でもそうかぁ、高校三年生か。僕がそれくらいの時はもっとはしゃいでたなぁ」

「そうなんですか？先生にもそんな時期あったんですね」

「そりゃあるよ。未だに自分の事大人だとは思わへんけど、あの頃は本当にガキやったなぁと思うし」

「後悔してる事とかあります？」

「んー？後悔かぁ....もっと無茶しとけば良かったなぁ、とかかな」

「無茶、ですか？」

「そ。もう大学生とかになったら、ほぼ大人と変わらへんし。子供で居られるのは、高校生までって感じやと思っといた方がええかもね。....ま、もうアラサーのおじさんから見たら高校生も大学生も変わらへんけどさ」

「....今年まで、って事かぁ」

「そ。若い時には無茶をしとけ、ってね。大人になったら、無茶なんてそうそう出来ひんから」

「なぁんかお節介なおじさんやな今の僕。あんま気にせんで聞き流してな」なんて笑った先生に「先生だってまだ若いのに」なんて零したのも覚えてる。

そう。ちゃんと覚えてるよ、先生。

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