え？彼氏？一般人ですけど。 THE FOURTH

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坂田side

「楽しかった？」

『うん、めっちゃ楽しかった。
ライブとかはじめてだったけど、あれすごい。

でも、ちょっと疲れちゃった』

「そりゃそうや、もう寝とき」

『…ん、じゃあちょっとだけ寝る』

「はいよ」

五分くらいの沈黙が続いた後、規則正しい寝息が聞こえてくる。

お願い、お兄ちゃんには言わないで、と言い張るAには申し訳なかったが、しっかりとあの男のことは本番後にそらるさんに報告した。

そらるさんはそりゃあ物凄い狼狽ぶりで、Aの不注意を彼にしては珍しく、厳しく注意していて驚いた。

甘やかしてるだけじゃない、いいお兄ちゃんやな。

それよりも笑えたのは、そらるさんが俺の顔色を伺ってたこと。

相手の男殺すなよ、だって。

なんやそれ。

きっと3分の2くらいは冗談だろうけど、よっぽど俺の顔が険しかったのだろうか。

当たり前だ、いい気になんかなるわけが無い。

とりあえず今は、Aをいたわるのでいっぱいいっぱいですよって返したら、ほっとしたような顔しちゃって。

“まあ、なんだ、その…

まあゆくゆくはお前も俺の弟になるわけだし。
暴走すんなよ”

しませんよ、って返したけど、ちょっとヤバいかも。

彼女の腰を誰だか知らない変な男が抱き寄せたってだけで、なんか、イヤだ。

加えてあの扇情的なあの表情。

やわらかそうな眉がきゅう、と下がるあの顔はいつも俺の加虐心を煽る。

ものすごくいじめたおしたくなる、もっと泣かせたくなる、そんな顔だった。

あの男にもそれをしたのかは知らないけど、どっちにしたって許せない。

知りたくもないし、許さないけど。

信号が変わったタイミングで、身動ぎもしなくなった隣のAを見る。

口をほんの少しあけたまま、無防備に安心しきって眠る姿が可愛い。

この子は、ずっと、俺の大切な人。

俺もずっと、この子の大切な人。

離れる気もないし、離す気もない。

それは独占欲という名をつけるにはあまりにも大きい感情だった。

それをなんというのか、俺は何も知らない。

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