え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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Aside

起きると、悠が隣にいなかった。

軽くパニックを起こしかけるが、落ち着いて深呼吸をする。

悠だって仕事があるんだし、毎日隣にいてくれる訳では無いのだ。

人工的な電子音を鳴らし続けるアラームを睨みつけてから、止める。

少しムカムカして、そこで自分の機嫌があまり良くないことに気づいた。

あんなに泣いたにも関わらず目が腫れていないのは、悠に無理やり渡された保冷剤で有無を言わさず目を冷やさせられたおかげだろう。

これで社員達に泣いてたことを悟られずに済むなあ、とぼんやり思った。

それでも、やっぱり気分は晴れないままで。

そんな微妙な気持ちのままリビングに行くと、机の上に可愛らしい赤のメモがあった。

誰が書いたのかなんて、分かりきっている。

“一緒に起きられへんくてごめんな
朝ごはん下手なりに作ってみました
良かったら食べてみて？

今日はまーしいと打ち合わせなんやけど6時までには帰りまーす
今日は俺が夜ごはんの担当なので食材も帰りに買ってくな！
Aも無理せんとお仕事頑張って。

P.S.
昨日のことは気にせんといてな
あとAのアカウント借りて説明ツイートしときました
またなんか言われたらすぐ言ってな
また1人で抱え込んだら怒るで？

悠より”

お世辞にも綺麗とは言えない字だけど、愛嬌のある文面は見てるだけで微笑ましい。

最後の追伸が気になってTwitterアプリを開こうとしたが、途中で辞める。

今日は折角悠が朝ごはんを作ってくれたんだから、それを楽しんでいい気持ちのまま出勤したい。

それでもやっぱり気にはなるもので、数分迷った挙句Twitterのアプリをあまり視界に入らない位置に移動させるだけに留めた。

スマホをテーブルに置いて、朝ごはんが盛られたプレートを自分の近くに引き寄せる。

朝ごはんはどこかのカフェのようにオシャレに盛られていた。

一体どこでこんな盛り方を学んだのかな…？

悠が作ってくれた朝ごはんは少し焦げてる部分もあったけど、それでも前よりは随分と美味しくなった。

でも、私にとっては美味しいかどうかではなく、悠が頑張って作ってくれたことに意味がある。

少しご機嫌になった気持ちを引きしめて、家を出る準備をする。

大丈夫、何もかも今まで通りだ。

変わったことなんてない。

少し怖気付く自分を奮い立たせて、玄関のドアを開けた。

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