え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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坂田side


｢坂田、気持ちはわかるよ。

でも、今回は我慢して。
今ツイートしたらリスナーさんも騒ぐよ。
そしたらAはもっと傷つくことになる。

それは嫌でしょ？｣

それを言われると俺は何も言えない。

｢でも、悔しいもん……｣

ズボンを握りしめてそう言うと、96猫が大きなため息を着く。

｢はあ……ほんまに…

まあ気持ちはわかるけどな。
そういう時はな、そらちゃんのアカウントで呟けばええねん。
ちゃんと彼氏からってことと怒ってることアピールしとくんやで｣

｢うん、棗ちゃんの言う通りにして。

絶対に歌い手のアカウントで呟いちゃダメだからね。
悔しいのは、分かるよ。

わたしも、おなじだよ｣

斉藤の目から、涙がこぼれる。

それを慰めるように96猫が背中をさする。

俺も泣きそうだった。

ありがたいことにそこそこ大きな影響力を持っていると言うのに、それをいざと言う時に使えないなんて。

｢ごめん、私達帰るわ。

Aのこと、坂田に任せてもいいよね？｣

｢うん、当たり前やん。
斎藤も96猫も疲れたやろうし、ゆっくり休んだ方がええと思う｣

｢おん、そうさせてもらうわ。

さかたんもしっかり休みや｣

その言葉を最後に、96猫と斎藤が重苦しい空気の中、席を立つ。

2人が見えなくなるまで見送った後、玄関のドアを閉めて俺らの寝室へと向かう。

そうっとドアを開けると、Aは横向きの状態で体を丸めていた。

いつも着ている半ズボンのパジャマから無防備に白い足が投げ出されている。

クーラーもかかっていなくて、リビングとはものすごい気温差だ。

クーラーをかけて布団をかけてあげて、ゆっくりと顔に張り付いた黒髪をどかしてやる。

んん、と寝言を呟くAにびっくりして一瞬手を引っ込めるが、また頭を撫でるのを再開する。

｢A、ごめんな…｣

ごめん、守ってやれなくて。

ごめん、間に合わなくて。

ごめん、気づけなくて。

俺はいつだって駆けつけるのが遅すぎる。

ぽたぽたと涙がこぼれるのを、Aにかかって起こしてしまわないようにTシャツの裾で抑える。

｢先ごはん食べよ…｣

晩ご飯を食べて寝る支度を済ませてからまた戻ってこようと立ち上がると、ぐい、と何かに引っ張られた。

｢……………A、起きてたんか｣

『＿＿＿＿＿＿＿ぃ』

か細い、綺麗な声がAの喉から漏れる。

『ゆうは、あやまらなくていい』

きゅっと、シャツを握る手に力がこもった。

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