え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。THE SECOND 【となりの坂田。】

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no-side

｢いやいや、やってみせるって……

先輩と彼氏さん高校の時からの付き合いなんですって。
会って1年の磯田じゃ無理だよ、傷つく前にやめときなって｣

｢磯田、何抜けがけしようとしてんだよ!!!
俺らと一緒に大人しく失恋しろ!!!｣

｢うるせえなんでお前らと仲良く失恋しなきゃなんねぇんだよ!!!!!!
とにかく、顔だけなら勝てるかもしれねぇじゃねぇか！

俺、今からロビーまで行って先輩の彼氏見てくる!!!｣

そう言って磯田がオフィスの出口へと大股で歩き出した時＿＿＿＿ドアが開き、ひょっこりと青年が顔を覗かせた。

青年の髪色は赤色で、黒のダメージジーンズに赤色のビッグTシャツというラフな服装がオフィスの中でとても浮いていた。

シンプルな金色のネックレスが胸元で光っている。

そしてその見た目に社員の気持ちは一致団結した。

社員の心の中は
“え、誰？ ヤンキー？”
である。

｢あれえ、おらんの？
もう、ロビーで待ってる言うたのに全然来んやんか…｣

特徴的な関西弁でそうブツブツ言いながらも、その青年はクーラーの冷気が逃げないように素早く丁寧にオフィスのドアを閉めた。

普通にいい子である。

そして、誰かを探しているようにキョロキョロとまわりを見る。

そのタイミングで彼は初めてぽかんとしている社員の存在に気づいたらしく、人懐っこそうな笑みを浮かべてぺこりと会釈をした。

｢あのぉ、○○化粧品会社のオフィスって、ここで合ってますか？

僕、ここの社員で人探してるんですけど…｣

彼が顔を上げた瞬間、どこからともなく感嘆のため息がもれる。

彼は正真正銘イケメンであった。

街頭アンケートで調査したのなら磯田のように9割どころではなく9割9分9厘、つまりほぼ全員がイケメンだと言うだろう。

目がぱっちりしていて大きく、涙袋もぷっくりしていて色白でどちらかと言えば可愛いよりの顔だ。

しかも、声は低めのイケボというギャップも持ち合わせている。

しかも性格よしときた。

当たりも当たり、大当たりである。

完璧なイケメンの気配をいち早く察知した女性社員が普段よりも数オクターブ高い声で応対する。

イケメンに目がないのは乙女の性なのでそこは甘く見てほしい。

｢はい、私がお取次ぎしましょうか？｣

｢わぁ、ええんですか？
帰る準備済ませてたのに面倒かけてほんま申し訳ないです……｣

眉を下げて申し訳なさそうに謝る彼に、また感嘆のため息がもれる。

なんていい子なんだ……!!!

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