urt sub ページ3
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「やっぱ男って浮気したくなるもんなのかな」
放課後の学校。
図書室で待ってっから。
そう伝えられて向かった先で、衝撃的な言葉を聞いてしまった、高3の春。
その悪びれもしない、心の底から不思議そうな声の主は、紛れもなく私の彼氏だ。
扉の裏で息をひそめて、じっと話を盗み聞く。
「さあ、俺はそんなことしたくなったことないから、わかんないけど。」
そらる先生の怪訝そうな声。
「うーん、なんか、日々の刺激が足りない?とか?」
「なに、うらたくん足りてないの?」
うらた、浮気したいのかも。
ふとそんな考えがぼんやりと浮かぶと、もうそれは留まることを知らない。
いやいやいや、そんなはずは無い。
愛されてる自覚はあるし、さっきだって文化祭を一緒に回る約束を取り付けて、うらただって嬉しそうに友達の志麻くんにちょっかいをかけて、上機嫌だったし。
登下校は毎日一緒だし、クラスも一緒だし、委員会も一緒だけど、ほかの女の子の影は見えない。
いや、うらただし、うまいこと隠してるのかも……
『………う、っ、』
どうして、私こうなんだろう。
モトカレとうらたは違うって分かってる。
うらたは浮気なんてしない。
だけど、少し疑ってしまうこの気持ちがたまらなく嫌で、そうやって疑ってしまう自分が、惨めに思えてくる。
私はこうやって疑って、1人で泣いて。
カッコ悪い、ダサすぎる、どうしようない。
うらたは扉の外の私になんか気づかない様子で、会話を続ける。
「___ほんと、わかんねえなあ。
浮気するヤツのキモチ。」
「なに、うらたくん浮気したいわけ?」
「え、なんで?
しませんよ、あんな可愛いやつと付き合ってるのに。」
『………ほんと、ばか。』
小声でつぶやく。
そんなこと、よく恥ずかしげもなく先生に向かって言えるよね。
顔が熱い。
「……結局惚気じゃん」
「いや、ほんとに、知りたくて。
あんなに良い奴と付き合っといて、浮気って…普通します?しないでしょ」
「またあの子の元彼の話?」
「いや、あいつマジでキモすぎ。
ぜっっっったい許さん、末代までたたってやる」
「いーじゃんもう終わった話じゃん
女々しいよ?」
「ぜんっっぜん終わってない!!!!
俺の中では!!!!」
「…彼女の元彼に執着する前に、うらたくんは彼女を不安にさせてることに気づこうね。
ね?」
そらる先生が出口横でうずくまっていた私の手を引いて図書室の中へ。
「『……えっ』」
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作者名:弥生2nd@夢見月 | 作成日時:2023年4月23日 3時