え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。【となりの坂田。】

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坂田side

｢やってしまったぁ……｣

Aが出ていってしまった後の玄関を数分見つめた後、やっと冷静になる。

｢なんで俺逆ギレしてもうたんやろ…
普通キレたいのはAの方やろ…

あーもう、配信うらさんちでやればよかった…
こんなん、なんて誤魔化せばええねん…｣

そんなことを言っても、もう遅いわけで。

Aが今頃そらるさんの家に行っているのは分かっている。

明日そらるさんに烈火のごとく怒られることも、分かっている。

でも、そんなことより＿＿＿

｢A、泣いてたな……｣

これでお別れ、とかになるんかな。

嫌やなぁ、高校のときから好きやったのに。

こんなことで終わってまうんか。

いや、事情を知らないAにとってはきっと“こんなこと”程度の話ではない。

そりゃあそうだろうけど。

本当に申し訳ないことをした。

｢＿＿＿そらるさん家、行かな｣

追い出されても、殴られてもいい。

車のキーを掴んで靴を履こうとすると、玄関のチャイムが鳴った。

もしかして、A？

そう思って、勢いよく扉を開ける。

｢A、ほんまにごめん！｣

そう言って、頭を下げると困惑したような声が返ってきた。

｢えぇ、俺Aちゃんじゃないんですけど…｣

｢さかたん、マイエンジェル泣いてたでぇー！
どう責任取ってくれんのやぁーー!!!｣

その声の主は、俺の期待してた人じゃなくて。

｢なんや、お前らか｣

すんっと気持ちが冷めていく。

無理、病みそう。

｢なんやって何だよ!!!
失礼すぎでしょ…｣

そう言いながらも楽しそうな、ナチュラルサイコパスこと、天月。

｢マイエンジェルが可哀想……
さかたん、Aちゃんわしがもらってええ？｣

｢あかんに決まっとるやろちょっと表出ろ｣

いつAを奪うかも分からない(こいつは女だが)危険分子である、96猫。

｢なんで俺とAが喧嘩したこと知ってんねん…｣

｢Aちゃんと電車ん中で会ったんよ！
そらるんとこ行くって言っててなー｣

｢うん、それでね、今そらるさんの配信面白いことになってるよ｣

天月が取り出したスマホには、仲良さげに談笑するまふとそらるさんとA。

うわ、むっちゃ楽しそう。

やっぱりかわええな。

＿＿＿＿え、A？

｢え？ は？ なんで？｣

｢ぐふ、さかたん焦りすぎw｣

96猫ははしゃぎながらスマホの音量を上げた。

Aの楽しそうな声がスマホのスピーカーから聞こえる。

｢ま、待ってや！
これ、どういうことなん？｣

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