え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。【となりの坂田。】

・ ページ43

Aside

『ねえこれ切り方わかんない…

切り方わかる？』

私がそう言うと悠はしばらくキョロキョロ部屋の中を見渡すとそこら辺にあった楽譜で顔を隠してひょこっとカメラの前に出てきた。

それでも楽譜からはふわふわの赤い髪と色が白い耳がちらりと覗いている。


》なんか彼氏さん見た目某船の赤色担当さんに似てるね！

》さっきチラッと声聞こえたけど声も似てた！

》声聞いて一瞬“ん？”って思ったよねww


“某船の赤色担当さん”って誰だろう。

お兄ちゃんと同じ歌い手さん？

そういや課長もなんか言ってたっけな。

確か“うらしまさ＿＿＿”あれ、なんだったっけ。

あ、美月が途中で遮っちゃったから結局最後まで聞けなかったんだ。
そんなことを思っているうちに悠は顔を隠しながらも私の手の中にあったマウスで素早くパソコンを操作する。

というか悠はなんで切り方知ってるの？

『じゃあお兄ちゃん、また配信お邪魔させてもらうね。
もしホラゲーするなら私達以外に人を呼んでおくこと、いい？』

｢…｣

お兄ちゃんはぷいっと横を向いている。

『返事は？』

｢………………｣

ガン無視。

多分これ以上返事を促しても多分無理だろう。

私に背を向けて壁にもたれかかっているのは拗ねている証拠。

しょうがない、そっちがその気ならこっちだって無視させてもらう。

最後は悠が三脚からカメラを外して私にカメラを向けた。

………なんか小っ恥ずかしいな。

『リスナーさんお兄ちゃんがこんなんでごめんなさい…
すごいグダグダだけど……こ、こんなんでいいの？

じゃあ皆さん、ばいばーい』

悠が満面の笑みで頷いたのを確認してからカメラに向かってそう手を振る。


》上目遣いのアングル最高…

》彼氏さんに“こんなんでいいの？”って聞く時可愛すぎる……

》お疲れ様です！

》また一緒に配信してください！


よかった、楽しんでもらえたみたいで。

悠がパソコンを操作して配信を切る。

｢そらるさーんこの録画残します？消します？｣

｢……………けす｣

｢了解でーす。
あ、この動画俺もらってもいいですかー？｣

｢……………すきにすれば｣

お兄ちゃんの返事を聞くなりまた私にはよくわからない操作をしだす悠。

『動画消しちゃうの？』

｢おん、俺の声も入っちゃってるしな｣

『ふーん…』

配信ってそういうものなのか。

『でもなんで悠が動画貰うの？』

｢そんなんもう1回怖がるA見たいからに決まっとるやん｣

『マジでやめて…』

・→←・

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す