え？ 彼氏？ 普通に一般人ですけど。【となりの坂田。】

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Aside

そしてあの浮気騒動の次の日。

｢ばかっ、アンタそんなこと坂田に言ったの?!｣

仕事の休憩時間に昨日のことを話していると、急に目の前にいた友人が怒り出した。

『……なによ、私なにも大したこと言ってないじゃん。

ただ悠が歌い手じゃなくて一般人で良かったって言っただけだよ』

コーヒーを飲みながら平然と言うと、それが問題なんだけど…とうずくまる友人。

そんな彼女の名は斎藤美月。

高校時代からの友人で悠のことも知ってるしセンラくんのこともお兄ちゃん達のことも知っている。

『だってネットって怖いじゃん。

お兄ちゃんのコメント欄見たんだけど、“好き”とかいっぱい書かれててびっくりしちゃった』

あれは本当にびっくりした。

お兄ちゃん、高校の時より人気なんじゃない？

あんなに照れずに好き好き言えるもんなんだね、最近の子の恋愛偏差値ってすごい。

｢そうだけど…これから坂田にそんなこと言っちゃ駄目だよ、可哀想だから｣

美月は私のおでこにデコピンをお見舞して“めっ！”と言った。

あんたは私の母さんか。

『ええ…？

可哀想って何が？
悠を一般人呼ばわりしたこと？』

｢…もうそれでいいよ……｣

頭を抑えてため息をつく美月。

それはどういうため息なの？

｢マジあんたら平和で羨ましい。

なんで高校1年生から付き合ってて別れないわけ？
高校生の恋愛なんてフツー自然消滅ではい終わりでしょ。

あーあーいいですねー“そらちゃん”はラブラブで！｣

『“そらちゃん”って呼ぶのやめて恥ずかしい』

口を尖らせながら“えー可愛かったのに”と言う美月。

可愛いとか可愛くないとかそういう問題じゃないんだけどね。

そこで、ふとあることに気づいた。

『美月はさ、お兄ちゃんとか歌い手のこと知ってたわけ？』

｢うん知ってた。

だって彼方さんと相川先輩のライブうちのコスメ使ってるんだもん。

私が企画リーダーの時ライブも行ったことあるし｣

私の会社は化粧品会社だ。

確かにアーティストにコスメを提供してたりはするけど…

美月も知ってたとは…なんかショック。

『えー、じゃあ知らなかったの私だけかぁ…』

ぐでんとデスクに突っ伏すと、上司が私に声をかけてきた。

｢一ノ瀬ってあのそらるさんの妹だったんだな。
いやあ、もっと早く言ってくれれば良かったのに…｣

『それ、私も思ってたところですよ…』

笑いながらそう言うと上司もくつくつと喉を鳴らして笑った。

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