元SPは機動捜査隊【MIU404】

マウント ページ22

九「そうですよ、どうして煽り運転なんてするんですか」

伊「負けたくないからに決まってんじゃん」

『負けたくない。』

伊吹さんの言葉に考え込んだ。

陣「車ってのは一人だけの空間だ。その中で気が大きくなるってもんもあるんじゃねぇか？」

志「車の意を借りてマウントを取る。

だけどマウントの取り合いは悲劇しか生まない。

おい、聞いてるか」

『伊吹さん？』

志摩さんの呼びかけに返事をしなかったため、声を掛けてみた。

伊「ねぇさっきの車さぁ、やっぱそいつじゃない？」

『私もそう思います。』

志「あ？」

伊「深川通りのおもちゃ屋の前で白い車見たんすよ、

その時なんだっけな･･･

多摩ナンバー」

九「多摩ナンバーの通報はこれまでありませんけど」

陣「どうしてそれが犯人の車だって思うんだ？」

伊「なんとなく」

志「うわっ。」

伊吹さんの言葉に皆呆れた。

伊「いや、なんか引っかかってて〜。

前に見た車と同じかもって。」

一生懸命身振り手振りを加えて思い出そうとする伊吹だった。

志「俺たちは、映像で見ただけ。

犯人の車を直接見てない。」

伊「何だろ

なんか感覚

なんかこの辺にもやっ、もやって。」

志「勘とか感覚とかやめてくんない？」

『音ですよ。エンジン音。

同じなんです！』

伊「あ！スッキリした、」

そう言って、勢いよく抱きしめてきた。

『スッキリしたなら良かったです！。』

伊「エンジン音が同じだ。おもちゃ屋で見たとき、えっと多摩の…」

2人は周りからの視線を気にせず、笑顔で抱きしめあい喜び合った。

そして、分駐所へと伊吹さんに手をつないで、連れてこられた。

志「多摩300しの1215」

私は、陣馬さんにメモしていた紙を渡した。

伊「やるじゃーん、そのナンバーで緊急配備！」

陣「待て待て！」

志「百歩譲って犯人の車を見たとして多摩ナンバーの車はエンジン音が似てたってだけだ」

伊「同じ。向こうがまた違うナンバーに変える前に緊急配備で捕まえないと」

『伊吹さん、ちょっと待ってください！』

陣馬さんも私も伊吹さんの勢いを止めようとするが、一行に止まる気配がなかった。

陣「別人だったらどうするんだ」

伊「俺の耳は正しい。」

陣馬さんとの言い合いで漸く伊吹さんは私のことを解放した。

陣「あのなぁ…」

志「緊急配備までして間違いだったじゃ済まないんだよ！」

志摩さんは、伊吹さんに怒鳴りながら、近くにあるゴミ箱を蹴っ飛ばした。

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