ショート｢ライブと不破湊｣ ページ32
今日、この舞台で、彼らの全てを込めて、舞う。
その事実だけで涙が出そうだ。
｢会場大きいなぁ…VΔLZ、すごい。｣
最初の頃は叩かれて、普通の人なら折れてしまうような言葉にも、3人で手を取り合い、負けずにここまで来た。
今ではこんなにも大勢が、応援している。
もちろん、配信の方もあるわけで。そちらにも何万人という人が待機している。
何故かこちらが緊張して、手が震えてくる。
こんな舞台でライブをするなんて、
｢VΔLZかっこいいな…｣
ぽそっと呟く。
｢まだ本人登場してないけど？｣
独り言に返事が帰ってきてしまった。
隣を見ると、そこには不破さん。
｢ふっ………｣
｢にゃはは、声出てないよ？
こんにちは〜Aちゃん。｣
会場のざわつきにかき消されてしまうのではないかと思うくらいの小さな声で、｢こんにちは｣と返す。
｢今日は一段と可愛いね。｣
｢あ、りがとう…ございます…｣
かっこいい。私服でもかっこいい。不破湊推しの雨傘からすると、この状況色んな意味で心臓が破裂しそう。
ライブもドキドキだし、不破さんが隣にいる事もドキドキ。
｢ペンライト三本ってガチ勢すぎん？
あの3人喜ぶと思うわ〜｣
こちらの手元を見てくすくすと笑う。
元々オタク気質の雨傘。
関係者席という事を忘れて楽しむ準備をしてきてしまった。
｢VΔLZの初めての大きなライブだから…。｣
｢…せやな、俺も楽しみ過ぎて昨日6時間しか寝れんかったわ。｣
｢…それいつもより寝てません？｣
不破さんと話していると、少しずつ緊張が解れている事に気がついた。
安心して3人のライブが見られそうだ。
この人は本当に場を和ませる天才だと思う。
｢ん、暗くなってきた。
始まんで。ペンライトつけよ。｣
こちらに手を伸ばし、私の手の中にあるペンライトに触れる。
カチッとボタンを長押しし、ひとつに光を点した。
｢ん、ついた。｣
…近い。いい香りがする。
前言撤回。この人は人をドキドキさせる天才だ。
果たしてライブに集中出来るのか…。
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作者名：めぐ | 作成日時：2023年3月21日 8時
