25本目「触っている手」 ページ25
「雨が降って参りました〜
そして握手会ありがとうございました〜」
握手会の夜、「握手してくれてありがとう」という枠がたち、いつも通りふわふわとした空気感でスタートした配信。
「みんなと握手できて嬉しかった〜
比率?うーん半々だった気がするけど女の子の方が多かった?気の所為?
……あ、晴くんだぁ………」
傘のファンマークと共に流れる質問に答えるAは、僕が投げた無言のスパチャに気付いた様子。
「VΔLZの3人がね、色々対策してくれて、何事もなくイベントを終えました。
杞憂だと思うけどね。」
Aがアレルギー反応を起こす物質に反応する「消毒液」を設置したり、荷物検査(薬品や刃物を探知する魔を放って)をしたり、できる事は全て設置した。
VTuberが握手会なんて前代未聞過ぎる。初めての事をするのに用意はありすぎて損する事はない。
「あとねぇ……来てたよね?お客さんとして。」
コメント欄がザワつく。
バレていたか。
「分かるよ。変装してたけど、いつも見てるし触ってる手だし、声も変えようとしてたけどそのままだったし。」
Aの握手会、なんとチケットを当てて僕も参加していたのだ。
バレないように、ボード(雨傘Aが映し出された液晶)の下から出された手をぎゅっと握って、「応援してます。」とだけ伝えたのだが。
誰が手だけで人がバレると予想できるだろうか。
僕も驚きなのだが、リスナー達はもっと混乱している。
いつも見てるし「触ってる」手???と。
334人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:めぐ | 作成日時:2023年3月21日 8時