激推ししてます、太宰さん！3 (ページ33)

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太宰さんと恥と蟇蛙。ページ33

太宰さんはスタスタとラヴクラフトさんに向かって歩いていく。ラヴクラフトさんも、太宰さんに引かれるように一歩近付く。そして飛んでくる触手。
ザッとしゃがむ太宰さんの後ろから太宰さんの肩に手をかけて中也さんが飛び出て、触手を蹴り飛ばす。
触手を伝って近付いた中也さんの腕がラヴクラフトさんの体を貫いた。

中｢重力操作｣

その一言で、ラヴクラフトさんの体が地面に張り付けられる。
中也さんの異能は触れたものの重力を操作する。

中｢そのまま朝までへばりついてな。｣

そう言って中也さんは綺麗に着地した。
隣で太宰さんはニコニコとしながら手をヒラヒラとふっていた。

太｢お見事。｣

『かっこよかったです。』

中｢…ったく、人を牧羊犬みてぇに顎で使いやがって。｣

太｢牧羊犬が居たら使うのだけど居ないから中也で代用するしかなくてね。あと、Aちゃんの言葉で顔赤くするのやめて。｣

中｢してねぇよ！｣

またワイワイと二人で喧嘩をし始めた。ふとラヴクラフトさんに目を向けると、パキパキと体を動かして、何かをボソボソと言っている。

『…何かおかしいです…なんかアレ気持ち悪い！』

中｢あ？｣

びゅっとこちらに飛んでくる触手。反射で目を瞑った。とん、と背中を押され、つんのめる。目の前にいた中也さんに支えられて転ばずに済んだ。声にならない声が隣から聞こえた。

中「うお！？」

『太宰さん…！？』

隣から太宰さんがいなくなっている。少し離れた所の木に項垂れてもたれ掛かる彼が見えた。

中｢太宰！｣

月明かりが陰り、中也さんに抱かれたまま顔を上げてそちらを見ると、大きな、触手が絡み合った塊……言わば触手の鎧だ。

『ちゅ、中也さん…』

中「おいおい…こりゃ本気でどういう冗談だよ…？」

あまりの変わりように唖然としてしまっていた。中也さんも焦りを隠せない様子。

『あ、だっ太宰さん！』

二人してそれをただ見つめていたが、中也さんははっとして私を抱き寄せた。腰に手を回しぴったりと体をつけ、飛ぶ様に走る。

『ぅえっ！？』

突然の行動に体が追いつかず、全ての臓器が置いていかれる様な感覚に襲われた。

中「太宰…腕が…」

中也さんから離れ、太宰さんに駆け寄る。怪我して包帯でぐるぐる巻きだった右腕がない。頭を抱えて混乱する自分を落ち着かせようとする。