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表面張力の微弱な余力 ページ7

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蝋燭の火を吹き消すほどの風だけで崩れてしまいそうな二階建てのボロアパートは、優しく壁に触れただけでもポロポロと音も立てずに命を失っていく。自転車を雑に置いて、錆びた鍵を穴に挿し込むと、私の帰りを拒むようにして扉が鳴いた。

チョコレートが溶けてドロドロになったス〇ッカーズの袋は、朝のまま放置されている。周りには活気づいた小バエ達が、人間の生命力を奪いながら空中を飛び回っていた。和室から聞こえた唸り声に耳を澄ますと、ブラック企業並に使い古された扇風機の電源を落としに足を動かす。





「……ただいま」





異臭。悪臭。汚臭。腐敗臭。言い方は沢山あるけれど、そのどれか一つに当てはめたところでそれらは解決しないのだ。絶望感からか、普段なら言わない挨拶さえ口から飛び出してしまう。返答は、ない。


今日は、アルバイトがない。夏休み中は死と隣り合わせだと自他共に認めるレベルで働き続けていたので、オーナーが「始業式くらいは休みなさい」と身体を気遣ってくれたのである。クビの前兆かな、とも感じれた。



汗ばんでいる死体から、三途の川に両足を突っ込んでいるのに心臓が動いているような生の余力が伝わって、吐き気がする。娘のためなど、考えられないのだろう。どこから湧いて出てるのか。この劣悪な環境で、殺されない意思が潰れないのは過ごしてきた時間の長さなんて簡単なものではないような。どちらにしても、タチが悪い。





「(いつになったら、)」





娘を娘とも認識出来ない母親を、母親と認識する気など起きるはずもない。でも、助ける義理がないのと同時に見放す勇気も、金もない。スパン、と襖を閉じると、私はまた精神的逃避行に興じた。





「(……いつに、なったら、)」





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*→←身勝手な指図は規則的



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こころ(プロフ) - 言葉遣いや、主人公ちゃんの気持ちの表現の仕方がすごい好きで、読んでいて面白いです。ゆっくりで良いので更新待ってます! (2020年9月30日 20時) (レス) id: efbab0acfd (このIDを非表示/違反報告)
小笠原@銀トッキー - この主人公のノリ、好きです!更新頑張ってください (2020年5月27日 12時) (レス) id: d7fcd729d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:堕天使 | 作成日時:2019年9月20日 20時

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