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不正解はSOSの合図 ページ11

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特にこちらを気にする様子もなく、平然と秒針が刻まれてゆく。時折「飯は食わねェの」と心配してくれたけれど「うん」とだけ返事して、会話は終わった。「先生こそ」と言おうと思ったが、心の中は言葉を交わさない時間を求めていたので、より快適に酸素を嗜むために噤んでおく。



──『そいつにどんな事情があったって、死んじまったら終ェだろ。今まで悩んできた時間も、無駄になるってことだ』

──『逃げてェ時こそ生きるんだよ。辛くても息してりゃ、どうにかなる』



ぐるぐると巡るその台詞に、そろそろ、目が回った。きらきらと輝いていたその台詞に、くらりと、目眩がした。価値観の相違が生んだ距離感は、手から溢れて零れ落ちる雫のように虚しい。掬えない。救われない。まさしく、決定的であった。





「……知りたくなんてない」





不正解は、不正解のままで良い。正解なんて、……知らなくたって良い。知識として得てしまったら、本当に独りだって気付いてしまう。せめて、知らないままで居たい。ワガママで未熟な、願いだ。


むくっと腰を上げて、机に向かう先生との空間を埋める。黙々とボールペンを走らせているので、肘をつき、覗き込むようにして屈んだ。同時に、太陽が雲に隠れて私の背中をぼうっと押す。





「今だけでいーの、」





形の整った右耳に唇を近付けて、その場限りの切実な愛を描いた。苦しみも痛みも忘れて、小さな快楽に身体が溺れる感覚を味わいたいだけ。生ぬるい闇に包まれた未来なんて、妄想するだけで充分でしょう?

────私はいつだって、逃げてばかりだ。





「ねえ、せんせ」





持ち運びサイズの本能を気分によって一斉に詰め替えて、白いハトと一緒に淀んだ青空に解き放つのである。心ばかりの秋風が炎と共に揺らめいたなら、温もりを逃すまいと指が絡み合った。…………お願い。どうか、本当を告げないで。





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虚言の裏に潜む愛は空虚→←純粋な上に無粋である



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こころ(プロフ) - 言葉遣いや、主人公ちゃんの気持ちの表現の仕方がすごい好きで、読んでいて面白いです。ゆっくりで良いので更新待ってます! (2020年9月30日 20時) (レス) id: efbab0acfd (このIDを非表示/違反報告)
小笠原@銀トッキー - この主人公のノリ、好きです!更新頑張ってください (2020年5月27日 12時) (レス) id: d7fcd729d7 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:堕天使 | 作成日時:2019年9月20日 20時

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