地球壊滅の予兆 ページ35
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「もしもし、万事屋さん!」
手合わせをしたその翌朝、いつものように仕事を頼もうと慣れた手つきで電話を掛けた私は、元気よく声を出す。けれども「あのね、今日はね、」と口角を上げたまま話し始めてから数秒後、万事屋さんは驚くべきことを口にした。
『悪ィが、今日は別の仕事が入ってんだ。もう出なきゃなんねーから、切るな』
「えッ……!?」
『稽古、しっかりやれよ』
──ブツリ。そんな嫌な音を耳にしたのに、受話器を戻さずに身体を固める。この世で一番仕事が来ないアノ万事屋に、別のお仕事が来た、と。なるほど、なるほど。…………なるほど。
「……えェェェエエエッ!?」
「ど、どうかなさいましたかお嬢様ァアア!!」
突然の大音量の叫び声に合いの手を入れるようにして駆け付けてきたじいやに「万事屋に!!お仕事が!!あの!!あの!!万事屋に!!」と、朝には相応しくないテンションで喜びを伝えると「明日は雪が降るかもしれませんね……」と、徐ろに空模様を確認した。
確かに、記録的大雪に見舞われても可笑しくはない。神に選ばれし天下のニート万事屋さんに、お仕事が舞い込んでくるなど、天変地異級の出来事なのだから。
「今すぐ地球を飛び立つ準備をした方が良いかも知れない……」
「お望みとあらば、早急に手配致します」
「でもどうしよう、じいや。万事屋さんを連れて行ったら仕事を無事こなせない……ああ、命と仕事た……彼にとっては選びがたい二択だ……」
そこそこ本気でそんなことを考えつつも、記念すべき彼の仕事を陰ながら応援する心を建設した。──の、であるが。海に連れて行ってもらってから毎日見ていたあの銀髪が現れないとなると、それはそれでちょっぴり寂しくて。
未来の雇い主として喜ぶべきことなのだろうが、どこか素直に喜べない自分が居るのもまた事実なのだ。
小鳥のさえずりが意地悪く耳に届いた頃、青く澄み切った空からは、れっきとした春を感じられてしまった。太陽の光が存分に注がれた桜の花びらは、喧嘩を売るようにゆらゆらと散る。その姿はやはり儚くて、それすら私は、憎たらしく感じた。
「麗らかな陽気なんて、クソ喰らえ」
────……そう言って彼女は、春の空を睨んだ。
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堕天使(プロフ) - 瑠々さん» 返信遅れました瑠々さーーん!いつもありがとうございますほんとにすきです。そう言って頂けて嬉しい限りですが全然、私なんてまだまだ全然です。これからも精進していきたいですよろしくお願いします!! (2019年5月25日 22時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
瑠々 - 面白かったです。とても。どう頑張っても、堕天使さんの文章には追いつけませんね。 (2019年5月18日 6時) (レス) id: ff21270137 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - 柚木さん» 柚木さん!!コメントありがとうございます!!もう、ほんとに嬉しい限りで嬉しいがすぎて令和早々死にかけておりますが、柚木さんのために生きて更新頑張ります!!!!(;;)こちらこそ平成は素敵なものになりました、ありがたいです、私もずっと愛しております!! (2019年5月8日 13時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
柚木(プロフ) - 堕天使さあああん!!!本当に大好きです!!なんでこんなに面白い作品を作ってくれるんですかァァ!!平成ではありがとうございました!!令和も負担がかからない位で活動を頑張ってください!!大好きです!!愛してます!! (2019年4月30日 22時) (レス) id: fe2805c04d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:堕天使 | 作成日時:2019年4月11日 20時