無意識的ガンガンいこうぜ ページ28
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「また、外に連れて行ってくれますか?」
そいつの言動は、実にいじらしかった。
生い立ちや家柄がそうさせたのは十分過ぎるほどに理解していたとはいえ、この上なく可憐で極めて痛々しいそれは、やはりいわくありげで。
了承の意を込めた頷きを強制してくるようなその目に、促されたままの行動を示した俺は、対抗して「はやく帰れ」と言わんばかりの視線を光線のように送ってみたけれど「楽しみにしてますね」なんて笑ったその顔に、不甲斐なく降参した。
……その後、何かを思い出したかのようにこちらの手を握ると、電話番号と住所を教えろとしつこくせがんできたので、その通りに従う。
当然、嫌な予感しかしないのだから「書くモンがねェだろ」とはぐらかそうとしてはみたものの「これくらいのこと頭で記憶出来ないとでも?」と、やや挑発的な態度を押し付けてきて、その勢いに流されながら口にしたというわけだ。何とも情けない話である。
「では、また」
満足そうなそいつを見ていると、こうやって全ての要求は自分の思うがままに叶い続けて、何不自由なく暮らしてきたのだろうなあ、という言葉が幾度となく頭をよぎった。周りの大人が馬鹿であることも否めないけれど、そうさせてしまうこいつもこいつで相当な馬鹿なのであり、正直呆れて仕方がない。
ひらひらと振った手は、風を切る様子がなかった。それを見守るように笑って見せれば、そいつは漸く高い塀と向き合う。流石に最後までは見届けようと黙っていると、何故だか時間が止まったかのように静止したまま動かなくて。
────そして数秒後には、全てを悟り。
「お前それ、どうやって上がんの?」
「あぁぁ……ッ!!」
三メートルはあろうその高い壁は、跳躍力だけでどうにかなる代物ではない。かといって引っ掛けられる足場も無ければ、身体能力を活かして勢いよく壁ジャンプ出来るような場所も見当たらないのだ。
帰りは計算外だった様子のガキがこの世の終わりかのように頭を抱えると、涙ぐみながら「踏み台になっていただくという依頼をしても良いですか……」と、声を震わせる。
「ンなことで泣いてんじゃねーよ、面倒くせェ」
「お金のない大人を踏み台にするだなんてそんな最低最悪な案を実行する他ないこの状況を作りだした愚かな自分が許せなくて……」
「自分責めてるようでしっかり俺も攻撃してくんのやめてもらえる?」
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堕天使(プロフ) - 瑠々さん» 返信遅れました瑠々さーーん!いつもありがとうございますほんとにすきです。そう言って頂けて嬉しい限りですが全然、私なんてまだまだ全然です。これからも精進していきたいですよろしくお願いします!! (2019年5月25日 22時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
瑠々 - 面白かったです。とても。どう頑張っても、堕天使さんの文章には追いつけませんね。 (2019年5月18日 6時) (レス) id: ff21270137 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - 柚木さん» 柚木さん!!コメントありがとうございます!!もう、ほんとに嬉しい限りで嬉しいがすぎて令和早々死にかけておりますが、柚木さんのために生きて更新頑張ります!!!!(;;)こちらこそ平成は素敵なものになりました、ありがたいです、私もずっと愛しております!! (2019年5月8日 13時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
柚木(プロフ) - 堕天使さあああん!!!本当に大好きです!!なんでこんなに面白い作品を作ってくれるんですかァァ!!平成ではありがとうございました!!令和も負担がかからない位で活動を頑張ってください!!大好きです!!愛してます!! (2019年4月30日 22時) (レス) id: fe2805c04d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:堕天使 | 作成日時:2019年4月11日 20時