暇つぶし大富豪 ページ26
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冷淡な風にも慣れてきた頃、帰りたくないという意思に反して目の前に広がったのは我が家の塀であった。自分の住んでいた屋敷が、こんなにも街の外れにあることを初めて知識として得て、また一つ大人になれた気はする。けれども、この時間があっさりと終わってしまうことに関しては、一切認めたくはなく。
万事屋さんは、音が目立たないようにと走行速度を落とした。現在が何時なのかすら把握出来ないこの状況で、帰宅を拒絶するなどといったハイリスクな行為には及ぶつもりもないし、その選択をしたところですることもない。……そうこうしているうちに、作戦決行時の合流地点へと到着してしまい、最後の溜息を吐いてみる。
ヘルメットを外して、自動二輪車から身体を下ろしてみたけれど。中々去り行かない私に疑問の二文字で形成された視線を送りつつも、どうしてか言葉を掛けてこない。──ので。
「報酬、渡してませんでしたね」そう言って懐から広辞苑ほどの厚みを帯びた茶封筒を取り出して「おいくらをご所望でしょうか?」なんて首を傾げると、彼は右下瞼と頬を痙攣しているかのようにヒクヒクとさせて、こちらを見つめた。
「あ……足りませんか?」
あちゃぁ、と頭をガシガシと乱暴に搔いて、猛省。
とんでもない無茶を聞いてもらったのだから、確かにこれ一つでは足りないはずである。自身の実に浅はかな思考回路を呪い「取り敢えず前払いとして……」と手に持ったそれを強引に押し付けると、あからさまに嫌がって、受け取ってはくれず。
「どっから盗ってきたんだか知らねェが、ガキがそんな大金懐から出すんじゃねーよ!傍から見たらゼッテー俺が悪者に映んだろ!!」
「まさか万事屋さん、私が金庫から盗んできたと勘違いしてらっしゃるのですか!?止してください!!これは私のれっきとした収入です!!」
「はァア!?わけわかんねェことほざいてんじゃねェ!!こんなモンテメーが得られるはずねェだろーが!!」
「馬鹿にしないで頂けますか!?確かにきっかけこそ暇を潰そうとしていただけでしたが、私のFXの才能は天下一です!!さ、貰ってください!!」
依頼料とはまさに気持ちである。万事屋は、精細な値段設定が難しい。だからこそ、こういった善意的な気持ちの表れは喜ぶべきだろうし、金銭面に余裕がない彼にとっては断る理由など存在しないはず。……要するに私は、意味不明以外の何物でもないと言いたいのだ。
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堕天使(プロフ) - 瑠々さん» 返信遅れました瑠々さーーん!いつもありがとうございますほんとにすきです。そう言って頂けて嬉しい限りですが全然、私なんてまだまだ全然です。これからも精進していきたいですよろしくお願いします!! (2019年5月25日 22時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
瑠々 - 面白かったです。とても。どう頑張っても、堕天使さんの文章には追いつけませんね。 (2019年5月18日 6時) (レス) id: ff21270137 (このIDを非表示/違反報告)
堕天使(プロフ) - 柚木さん» 柚木さん!!コメントありがとうございます!!もう、ほんとに嬉しい限りで嬉しいがすぎて令和早々死にかけておりますが、柚木さんのために生きて更新頑張ります!!!!(;;)こちらこそ平成は素敵なものになりました、ありがたいです、私もずっと愛しております!! (2019年5月8日 13時) (レス) id: 725743dc16 (このIDを非表示/違反報告)
柚木(プロフ) - 堕天使さあああん!!!本当に大好きです!!なんでこんなに面白い作品を作ってくれるんですかァァ!!平成ではありがとうございました!!令和も負担がかからない位で活動を頑張ってください!!大好きです!!愛してます!! (2019年4月30日 22時) (レス) id: fe2805c04d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:堕天使 | 作成日時:2019年4月11日 20時