分かったフリ (ページ5)

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また声もかけずに家を出てしまったのは

上手く話せる自信が無かったから

今までどんな顔で会ってたかとか覚えてないし
話題とかってどうしてたんだっけ？

まぁそれはいい

久し振りのオフ、いつもと同じくらい早い時間に家を出たのに理由が無いわけではない

誕生日くらい覚えてる

プレゼントも決めてある

それを受け取って、またすぐ帰ってくる

財布と携帯と鍵だけポケットに入れて出てきたから、仕事だとは思ってないだろう

どんな顔して待ってるんだろ

楽しみに待ってくれてたらいいな

「ただいまー」

冷めきった空気だけが出迎える

リビングの電気をつけると
寝室の扉が半開きになっているのに気付いた

裸にされたダブルベッド

なんか寒そう

でもどこにも干されているシーツが見当たらない

「、、あった」

濡れたまま小さい箱に閉じ込められているシーツ

珍しいな、家事とかしっかりするタイプなんだけど

朝飯の後も片付いてないし

なんか嫌な予感がする

メッセージに既読はつかないし電話も繋がらない

彩乃の勤務先も、思い当たる節全部にあたったけど見つからない

早足で繰り出た街はムカつくくらい晴れてて
ロングコートを羽織ってきたことに後悔した

どこにいんだよ

もう帰ってるかもと思って家に戻っても部屋は暗いまま

シンクの小さい茶碗と箸を片付けて
冷たく硬くなったシーツを干した

ソファーに腰をおろして無心に壁を見つめる

寒さで暗い部屋に目を覚ましたとき、しばらく眠っていたことに気が付いた

、、、もう21時なんだけど