分かったフリ (ページ13)

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4時に起きた

家を出る支度って言っても、借りたパジャマから昨日と同じ服に着替えるくらい

髪も特にセットせずメイクも何もしないで寝室を出る

稜雅の寝室の扉をノックしようとすると、紙を貼り付けた鍵がドアノブに引っ掛けてあった

『家の鍵締めたらポストに入れておいて』

起こすなってことだよね
どうせそんなことだろうと思ってたけどさ

私はちゃんと声かけてから家を出たかった

じゃないと取り残される方が寂しくなるんだもん

声かけられないなら短い手紙でもテーブルに置いておこうかなとか

簡単な朝ごはんくらい作り置きしようかなとかも思った

けど全部やめた、何もしないで出て行く

本当に昨日の夜は一緒にいたんだっけって思うくらいに跡形も無く去っていくよりも

少しの温もりを残して消えちゃう方が何倍も辛いの知ってるから

その感情に彼氏彼女がいるとかいないとか関係ないのも分かってる

決めた人がいたって、他の人に淡い想いを抱くこと

今の私も同じだもん

稜雅と同じ気持ちなんだよ

どっちも何も言わないけど

それが私たちの関係を続けるための暗黙のルールだから

会ったときだけ付き合う前の両思いみたいなドキドキに溺れて

一線は超えない

カップルに付き纏う窮屈な責任問題から目を背けて

会えば必ずそういう気持ちいい感情を抱ける
そんな環境に甘えて

ずるい奴

もうそろそろ稜雅からも卒業しなきゃね

立ったまま瞳を閉じる

暗い部屋に口づけをして家を出た