妹じゃなくて (ページ39)

今日:5 hit、昨日:1 hit、合計:65,269 hit

38 ページ39

.

たった数時間ぶりの再会なのに、部屋に入ってきた瞬間のよそよそしい顔を見逃さなかった

「あや」

扉の前で立ったまま俯いて動かないから名前を呼ぶと、そのまま肩を震わせる

ベッドの扉側に足をぶら下げるように座り直して
そのまま立ち上がってあやを抱きしめたかったけど

今は違う気がする

「来てくれてありがとう

待ってるから

落ち着いたらこっちおいで」

きっと今のあやに必要な言葉はこれだけ

いつだって、もういいよって言いたくなるくらい1人で抱えて思い悩みすぎるところ

そういうときは邪魔されないで誰にも迷惑かけないように1人で考えていたいこと

落ち着いた後には思いっきり抱きしめて欲しいこと

全部知ってるから

そんなあやのことを好きになったから

今は俺が我慢する時間

涙で一度乱れた呼吸は

段々と深呼吸に変わる

歩み寄る小さな身体を黙って受け止めて

あやの全てを両腕で包んだ

左手は左腰を支え、右肘は背中に
右手は胸に押し当てられている頭を撫でる

手と頬で柔らかい髪を感じ

背中で入院着がきゅっと握られたのを感じた

「ありがとう

俺の彼女になってくれてありがとう

愛してる」

あやに言う3回目の愛してるは

その意味を

声で、体温で、身体中全部に伝えたくて

少しきつく抱きしめ直して染み込ませた

重なった身体はゆっくりと解け

今まで続いていた空白の時間の始まりと終わり両端から糸を手繰り寄せるように

視線を絡ませる

あやの細くて白い指が俺の頬をなぞったとき

泣いていることに気付いた