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アニメでしか見た事のない如何にも長いテーブルと、座り心地の良い椅子。真ん中でもなく、左右のお誕生日席でもなく少し端の方に座る私はこの豪勢な部屋で朝食を待っていた。出来上がるまで10分ぐらいかかると部屋を出ていったスングァンさんに言われ今ここにのんびりと座っている。
スングァンさんが言う通り、入れ替わるようにドギョムさんが先程入ってきた。私の横に綺麗な背筋で立っていたドギョムさんにお嬢様扱いに慣れない私は横に座ってもらうことにした。
しかし、会話が弾まない。原因はさっきスングァンさんとボノニから聞いたあの話だった。少し気まずい思いをしているから、ドギョムさん相手に何を話せばいいのかと変に気持ちが焦っている。ドギョム、も確かあだ名だったから彼を小さい頃と照らし合わせたいが本名が分からないため全く思い当たる節がない。顔を見れば多少なりとも思い出せるかもと思ったが、今まで何も思わなかったと言うことは色々必死に考えても無駄な訳で。
｢難しい顔してるね、悩み事？｣
｢…そのうち話します。｣
｢…本当？心配だよ｣
本当に不安そうな表情を向けられる。
果たしてドギョムさんはこれを言ったら悲しむのだろうか。いつでも話せる時に言ってねと眉を下げて笑う姿に、ただ申し訳なさを感じた。無論、彼の記憶の中に私がいるかもどうかも分からないけれど、もし記憶の中にいたとしたなら。ドギョムさんは今の私をどう思うのだろう。
｢僕って頼りないかな？｣
その言葉を聞いた瞬間、胸がドキリとした。
前にも同じことを言われたような記憶があった。
一体いつ言われたのか、果たしてドギョムさんなのかもわからない。ただ、こう言われことがあるのは1回だけでは無いのは確かだった。この言葉を言われた時と同じような緊張感を私は不思議と覚えている。
｢いや！こんなこと言ってごめんね。まだ仲がいい訳じゃないのに、焦っちゃった。｣
｢ドギョムさん｣
｢どうしたの？｣
｢私の事、覚えていますか。｣
言ってしまおう、と思った。このまま私が何も言わなければドギョムさんとの距離が離れてしまう。そんな気がして躊躇する事もせずに一言伝える。
そしてその言葉を聞いたドギョムさんは喉元がピクリと動くのが見えた。私のたった一言が、彼を固まらせていたように思う。
その意味は、1つしかないと私は分かっていた。
ドギョムさんの唇が震える。
｢＿＿＿＿＿＿＿知らない｣
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作成日時：2024年3月10日 16時
