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虎はダンス部の部室から地味に遠い自分の教室へ一目散に走っていた。
放課後、ダンス部の部室に行ったスニョンはまだ集まらない部員を待っている間軽いストレッチをしていた。ストレッチをし終わる頃には、13人全員が揃ったので頃合いだと思ったスニョンはウキウキで開いた手提げバッグを開く。この文化祭のダンス練習ために買った、新品未使用のピカピカの練習靴をここぞと言う時にダンス部員に見せようとしていたのだ。
だがその靴は手提げに入っていない。アレ、と思考を30分以上前に戻っているとピンと来た景色が思い浮かぶ。
あ、やべ、机の上だ。
放課後に同クラの靴オタクに自慢していたら思っていたよりも時間が過ぎていて、走って部室に行ったところまでは覚えている。我ながらなんという失態。
確かに持ってきた記憶が無い。多分教室にあるのだろう、早く取って早く見せよう。
別棟までたどり着くと、息を整えながら教室へ続く廊下を歩いていく。そして教室へやっと着いたスニョンは未だ止まないウキウキの心のまま扉の前へ立った。
が、しかし。
いつまで経っても引手に手が伸びない。
スニョンの真っ黒な瞳には床に這い蹲って残飯を口に押し込まれている彼女が映っていた。
｢…………｣
薄ら聞こえてくるむせ込む音から足で食べ物を潰したような音。
グチュグチュグチュグチュ
おかしな事に不思議と匂いまでしてきてスニョンの喉元がピクりと引き攣る。
スニョンはその光景を見て、数秒。
種を返した。
靴、もういいわ。
あからさまに不機嫌になったスニョンは歩いているうちにイラつきが段々と早歩きになってそして走った。
あぁ、ムカつく。本当に、ムカつく。
ただ靴を取りに来ただけなのに、途端に不快になるものを見せられたのがとてもムカついた。いじめられている奴もいじめるヤツらも、その中にいる�爛▲ぅ牒瓩眩管�全部。
見たくもないものを見せるなよ。
ただ部員に俺の靴を見せたかったのに何もかも嫌になった。
気分が乗らなくなった所ではない。不快過ぎる。
俺、ぜってーあの子とダンス練習なんて出来ないわ。
そうしてスニョンは何も持たずにダンス部の部室へと戻って行った。
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作成日時：2024年3月10日 16時
