消えた磁力 (ページ8)

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夢ページ8

…

なんだろう

　 …

この感覚

　 …ぶ

誰だ

　 …ブ

声が聞こえる

　 …ワーブ

とても懐かしい

　ナワーブ

低音の心地いい声

　「ナワーブ」

「っ！」

名前を呼ばれ、はっと目が覚める

暖かい朝日とともに目に映ったのは心配そうにこちらを覗き込む見慣れた顔

黒髪のおかっぱで

左目の周りにケロイドのある

真っ暗の夜空を思わせる黒い瞳をした

「…ノー…トン…？」

俺が呟くと少し安心した眼差しで微笑み、こちらを見る

「おはよう、ナワーブ」

ああ

「何かうなされてたけ…ど？！」

俺はベッドから上半身を勢いよく起こして抱きつく

「な、ナワーブ？」

ずっと求めてた

この声を

腕を

温かさを

「ーッ！」

声にならない声をあげる

感情のままに、俺は逞しく、自分より大きなノートンの背中に必死にしがみつき、顔をぐりぐりと押し付けた

「何か怖い夢でも見たの？」

そう囁いた声の持ち主は俺の頭を大きな手で撫でる

俺の手とは違い、ケロイドのある硬くまめのできた大きな手

それを皮切りに涙が一気に溢れ出す

「ノートンッ、ノートンッ！」

名前を呼ばずにはいられない

抱きしめずにはいられない

泣き続ける俺を彼は優しく抱きしめる

「…僕はここにいるよ、大丈夫」

ああ、全て夢だったのだろうか

「ノートン…俺…」

「でも…」

俺が話しかけると同時に撫でられる感覚がなくなる

「お別れだね」

次の瞬間、暗闇が広がり、全てが溶け堕ちていく

「ノートンッ？！」

手を伸ばすが届かない

「やだッ！行くなッ！！」

心臓の鼓動が早くなる

絶望が俺を飲み込んでいく

「ああ…！」

彼が消える

「ノートンッ！！！」

…

…ワーブ

「ナワーブ！」

俺を呼ぶ声が聞こえ、目を覚ます

「はあッ！…はあ…はあ…」

飛び起きて見渡すとノートンの部屋だった

窓を見ると暗くなり、夜風が吹いている

額の汗が頬を伝い流れ落ちる

夢？

だとしたら…

「ーッ！」

俺は腫れた目を毛布に擦り付け、歯を食いしばる

夢でよかったという安心感と現実に戻ってもノートンがいないという苦しみで感情がぐちゃぐちゃにされる

「ナワーブ！どこ？！」

「サベダーさん！」

外から慌ただしい足音と自分を呼ぶ声がする

「…」

俺はベッドから出てドアノブを回し、ノートンの部屋を出た