消えた磁力 (ページ27)

今日:38 hit、昨日:0 hit、合計:5,709 hit

写真家ページ27

「ナワーブどこ行ったんだろ」

中庭を出てナイチンゲールの部屋を訪ねた後、別れたナワーブを探しなが光が差し込む廊下を歩く

相変わらずナイチンゲールは不在で何も聞くことができないが、この数日を過ごしてわかったこともある

まず体の状態としては床以外の物に触れることができない。床は触れるけど音が出たりすることはない

また汗や涙が出ることはなく、食事やその他の行為は必要ない状態である

そして、あの夜からナワーブは毎日ランプを灯したまま寝るようになった

おかげで僕はあの悪夢を見ずに過ごすことができるのだが、疲れた様子で机で寝落ちする彼を見るのは少し心苦しい

「早く元に戻らないと…」

「やめろッ！！！」

そんなことを考えていると廊下の奥から激怒するような大声がした

何かあったのかと思い、急いで駆けつけるとそこには微かに口角を上げて微笑むジョゼフとものすごい剣幕のナワーブが向き合っていた

余裕そうなジョゼフと反対にナワーブは眉間に皺を寄せ、鋭い目つきで睨みつけている

「ふざけんじゃねえっ！あいつは生きてる！俺はあいつを絶対に見つける！何年でも、何十年でも探して見つけ出してやる！俺は…！」

どうもジョゼフが僕について何か言ったことでナワーブが怒っているようだ
怒鳴るナワーブをでジョゼフは嬉しそうな表情をしたまま見つめている

まるでナワーブが怒っているのを楽しんでいるような顔をしていて、それに苛立って僕も睨みつけてしまう

ポタッ…

ふと、何かが床に落ちる音が聞こえて振り向くとナワーブが涙を流していた

「ナワーブ？」

「…クソッ！」

近づこうとしたがナワーブはこちらに背を向けてどこかに走り去ってしまった

彼の顔を見た瞬間、このまま彼を1人にしてはいけない気がしてあとを追おうと走り出す

カシャッ

その瞬間、後ろからカメラのシャッター音が聞こえた

振り返るとジョゼフがカメラで写真を撮り、クスリと笑っている

「あーあ…」

何をしているんだこの男

「クスッ、冗談なのに…」

「君は愛されてるね、ノートン」

写真をペラペラとめくりながらジョゼフが放った一言

まるで僕がここにいることがわかっていて言っているようだった

だとしたら尚のこと、さっきのナワーブに対しての態度が許せない

「…僕が戻ったら、覚悟しておけ」

聞こえないと知りつつも怒りの言葉を口に出し、改めてジョゼフを睨みつけた僕はナワーブの後を追って駆け出した