消えた磁力 (ページ25)

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灯りページ25

…

「ハア…ハア…」

階段を駆け上がり、灯りのついていた部屋の前まで来て深呼吸をする
ここに来るまで暗闇の中を全力疾走したから息が苦しい

「…よし」

勝手に入るのは悪いと思いつつ息を整えて部屋に入った

中に入ると窓辺にある机に火がゆらゆらと灯るランプを置き、椅子に座って日記を書く人物がいた

ランプの灯りで若干赤みがかった茶髪の長髪を下ろしている後ろ姿は一見女性のようだ

僕はこの人物をよく知っている

「…ナワーブ」

そう、ここはナワーブ・サベダーの部屋だ

辺りを見ると見慣れた家具や彼の軍刀が置いてある

ナワーブに近づき、ダメ元で触れようとするがやはり通り抜けてしまう

触れられないのは悲しかったが、いつになく集中して日記を書く彼が気になり、覗き込む

そこには僕がいなくなったことやそのことについての自分なりの考え、明日からのことが書かれていた

「へぇ、すごい細かく書いてるんだ… ん？

…っ！」

最後に彼が書いた言葉に目を落とした瞬間、ハッとして目を見開いた

　＿絶対にノートンを見つける＿

元に戻ることを諦めかけていたが、彼は必死に見つけようとしてくれている

自暴自棄になっていた自分を恥じた

そして気付かされた

そうか

死んだら君と離れ離れになるのか

僕がいなくなったら君が悲しむのか

もう二度とその髪や手に触れないのか

君と、一緒に歩いていけないのか

「…それは嫌だなぁ」

…よし

決意を固めて両手で勢いよく自分の両頬を叩く
叩いたところは熱くなり、ヒリヒリと痛んだ

僕は生きる

諦めずに元に戻る方法を探そう

ランプが照らす彼はきっと

暗闇で見つけたこの灯りはきっと

　

僕を導いてくれる

そんな気がした

日記を書き終え、机にうつ伏せになったナワーブの近くにしゃがみ込み、下から疲れ果てた子供のように眠る彼の横顔を見て僕は笑いかけた

「…早く見つけてよ。ナワーブ」