<<読者様3000人記念>> Blue 【Jun Matsumoto】 第１章

9. 気まぐれと好奇心 ＜J side＞ ページ9

話をふっちまったのは俺だけど、
あーだこーだ盛り上がり始めた４人。


皆をよそにもう一度
取り出して眺めてみた手紙。

中には、俺を知ったきっかけや
好きになった経緯、
こないだの国立ライブのこと。

１０周年とミリオンセラーへの
お祝いの言葉、そして
”本当にありがとう”という
心からの感謝の言葉。


普段もらうファンレターとは
内包している空気感が
なんだか違ってて。

日を重ねるごとに
どんどん気になっていって。





それはほんの気まぐれだった。

”好奇心”って言っても
よかったのかもな。

ちょうど次のツアーまで
時間があった、とある日の午後。

偶然にも俺だけ数時間空いた
さわやかな秋晴れの午後。


ファンレターだけど、
決してファンレターじゃない、
こんな手紙。

一体どんな街で、どんな人が、
どんな想いでこの手紙
書いてくれたんだろう？


気がついたら車のキーをまわし、
手紙に書かれた住所を手ががりに
東京郊外へと車を走らせていた。








...冬桜子さん。

いまでも目を閉じると
あの日の空に負けないくらいの
青いスカートをはいていた
あなたの姿がすぐに思い浮かぶよ。


あの時の俺は、理由はどうであれ、
久しぶりのドライブに心躍らせ、
ハンドルをただ握っていて。


これから始まる、小さくも深く、
胸が張り裂けそうなくらい
切ない物語のことなんて
少しも知らずにいたんだよな...



でも。たとえ知っていたとしても。

俺はあなたに何の迷いもなく
向かって行ったんだと思う。


今でもはっきりとそう言えるよ。

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