マイ・ガール 【Jun Matsumoto】 第3章

93. 追いつけない気持ち ページ1

この１週間、潤からの電話に
出ることができなかった。


メールなら普通に
やり取りできるのに。

声を聞いてしまったら。
とたん狼狽してしまいそうで。

声を聞かれてしまったら。
おかしな自分を悟られてしまいそうで。


そう思ったら。
かかってきても取れずにいた。




あの日。センパイを
抱きしめてしまった日。

あの日からどこか
落ち着かない自分がいるんだ。


決して恋心なんかじゃない。
それは誓って言える。

私が好きなのは潤だけ。

きっとこれは
『罪悪感』のようなもの。


そう。だからなんだよ.....







でも。そう思うのに。

やっぱり気持ちが
追いついていけていない。






あの夜。どれくらい
抱き締めていたんだろう。


少し落ち着いたようなセンパイは。
私の肩にそっと手を置いてから
ゆっくりと離れて。

それからすっくと立ち上がって
一人タクシーに乗って帰って行った。





次の日。会社では
いつも通りのセンパイだった。


ほんの少し目は赤かったけど。
いつもと変わらずに凛とした背中で
パソコンに向かっていた。



その後ろ姿に。
私の方が胸が熱くなって
泣きそうになってしまった。



あれ以来、以前より
話しかけられることが
減った気がする。

これって。
避けられてる、のかな...？

やっぱり私、大それたことを
してしまったんだろうか？

それとも。

センパイにとってはあんなこと
大したことじゃなかったのかな....？



そんなことを思うと。

自分でも持て余してしまうくらい
すっきりしない最近の感情。






そんな状態で迎えた週末は。
一人で家にいると
やっぱりもやもやしていた。

気を晴らそうと。
掃除に洗濯と体を動かしてみるも。
それらが終わったら
何もすることがなくなってしまった。



....東京にいたら。
潤のところにも
掃除しに行くんだけどな....



ふと潤が恋しくなって。
今なら話せる気がして。

携帯を手に取り、
潤にかけようとするけど。
寸でのところでためらってしまう。



やっぱり変な自分。
もうやだ.....っ





こうしていても
どうしようもないから。
これから外にでも出ようか。




....そうだ、クリスマスも近いし。

潤へのプレゼント選びに
くりだしてみよう。






そう思ったら。
少し上がっていく気持ち。

弾み出すその気持ちのままに
私は出掛ける支度を始めた。

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