8. 星空の下 ページ8
次第に暗くなっていく館内。
”これから始まるぞ”っていう高揚感で
胸がいっぱいになってくる。
椅子のリクライニングを少し倒した。
ほどなく目の前に映し出された、
昼間のこの辺りの風景。
へぇー、都心の景色とは
またなんか違う感じ。
映像はだんだんと太陽が傾き始め、
月が昇り、そして夜が始まった。
一番星がキラリ。
北斗七星も見える。
ドームいっぱいに繰り広げられる
１０月の夜空。
東の空からのぼるオリオン座。
秋の星座・一等星のみなみのうお座。
ふーん、フォーマルハウトっていうんだ。
隣に目を向けるとそこには
みずがめ座とやぎ座が。
星占いだともうちょっと
後の時期なのにな。
南の空にはペガスス座が
輝いている。
今時期ってこんな星空が
見えるんだ.....
満点の星空。
今にもオレの上に
降ってきそうなくらいに。
今にもあの空にすいこまれて
いきそうなくらいに。
この広いプラネタリウムに
たった一人で座っているからかな？
まるで星空の中にポツンと
自分一人しか存在していない感覚。
でも全然イヤじゃなくて。
むしろ心がどんどん落ち着いて、
透き通っていく感じで。
これって現実なの...？
それともオレ、夢、
見てるのかな.....？
あ....
気がついたらオレの頬を
ツーーッと伝う一筋の涙。
どんどんにじんで、
ぼやけていく秋の夜空。
あ、れ....
別れ話されたときは
全然平気だったのに。
何だって今頃
こんなに出てくんの....?!
何で....
....そっか....そっか、オレ。
短い間だったけど。
オレ、思ってたより彼女のこと。
好きだったんだなぁ....
星の輝きが、美しさが目に、
胸にしみてグッと苦しくなる。
もう涙、止まんないや.....
夜明けに近づいて、
だんだんと白々としてくる
空見上げながら
そうやってしばらく泣いていた。
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作者名：かこ
| 作成日時：2014年1月18日 18時
