箒星 【Sho Sakurai】 第１章

32. ハブの穴 ＜S side＞ ページ32

「適当に座っててください。」

「...はい....」




変な緊張。

別に女性の部屋に入ったのは
初めてじゃねぇけど。

虎の穴？いやいや、言うなれば。
マングースがハブの穴に
入った感覚か(苦笑)？



俺にそう勧めて。
キッチンで支度に
とりかかる北田さん。

ソファに腰かけるも。手持無沙汰で。
だから失礼になんねぇ程度に
部屋の中を見回す。


結構年季入ってるマンションだよな。
２DKのこじんまりとした部屋。



なんか。意外だった。


合コン三昧で。あの性格だから。
もっとハデハデな部屋
想像してたんだけど。

グリーンベースの、
質素で落ちついた空間。
物少なくて。
きちんと整頓されていて。

でも女の人の部屋って感じで。



なんつーか。
最初に俺がいだいた彼女の印象と
違ってねぇというのか。


もしかしたら。ネコかぶりな彼女も。
実のところ本当の彼女じゃなくて。

ホントの彼女はまた
別のところに存在してることを
物語っているように
思えてしまう空間で。



....だからといって。
暴言の数々を
許したわけじゃねぇよ。

ほだされるな、サクライショウっ










自分に言い聞かすようにしたその時。
つと目に入った本棚。

CDや本がきっしり並んでいる。




.....やべっ(＞＜)
俺と好み、似てるかも★

読みてぇと思ってた本。
持ってるCDとか微妙にかぶってるし。

よく見ると。食卓の上には
日経新聞が載っかってる。





「....こんなの読むんだ」



思わずポロリと出てしまった問いに。



「え？あぁ、合コンでの
話題作りのためです。
政財界や一部上場企業の方との。」



なんて。やっぱりさらりと
返してくる北田さん。



....その労力、絶対もっと他のところに
費やした方がいいと思うけど...


ホント徹底してんな。
ある意味感服。

その方向性は。俺には
ちっとも理解できねぇけど。
角度変えりゃ、
”目的に向かってまっすぐな人間”
とでも言えんだろうなぁ...(苦笑)

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