☆ ページ28
「...で。食事も行ったって？」
....翔くんと、って
ことだよね...？
「...う、うん...すごく。
楽しかったよ...」
面白くなさそうな潤が
手に取るようにわかる。
怒っているの？
でも。
他の知らない人じゃなくて
翔くんだよ？ なのに...
あ....
翔くんだから。
余計に怒っているの...？
それはたぶん。
ううん、絶対。
潤にはその時の私の
心の揺らぎなんて
お見通....
その時。
潤が私に背を向けて
前を歩き始める。
「潤っ、待っ！」
かけた声に。
次の瞬間、くるりと
こちらを振り返って。
まるで射抜くような視線で
まっすぐ私を見つめながら
潤が放つ。
「浮ついてんじゃねぇーよ...っ」
翔くんの優しさに
グラついていた私の心
全部見透かしたような
鋭い言葉に。
ドクンッと全身の血液が
逆流したかのように
心臓が音を立てて。
体中が冷たくなる。
瞬時に身動きも
できなくなる。
じゅ....
そんな私の手を。
次の瞬間、何も言わずに
バッと取って。
私のマンションへと
また歩き始める潤。
潤の広い背中見つめながら。
少し小走りで引かれるようにして
後をついていく。
つないだ潤の手のあたたかさが。
ゆっくりと伝わってきて
心に染みいってくる。
やっぱり潤にはお見通し。
情けない。
ちょっと潤に逢えないくらいで
グラグラしてしまった自分。
こんなんじゃ。
潤の彼女の資格ないよね....
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作者名：かこ
| 作成日時：2017年3月15日 15時
