９「全部僕がしてあげる」ジェノ ページ9
隣に座る彼女を壊してしまいたい。他の男が近寄ってしまう前に２度と戻れない沼に陥れて、気がつかないうちに中毒にしてしまいたい。白い肌、透き通った瞳。きっとホルマリン漬けにして閉じ込めても生きている女より美しい。
「ジェノ、どうしたの？」
家にあったDVDを見ていた彼女が物思いにふけっていた僕の顔を覗き込む。
咄嗟にいつもの笑顔に戻して「なんでもないよ」と首を横に振った。
「そう」
そしてまた視線を戻す。
今までの理想と少しでもそれているからと切り捨てた子とはわけが違う。
僕が幼い頃から抱いていた理想像そのままの君を僕は絶対にぞんざいに扱ったりなんかしないよ。
美しい君、何もしなくたっていい。
全部僕がしてあげる。
その日は何もしなかった。
彼女が帰ってからカバンの中からノートを取り出し、１番後ろのページを開いた。
授業の合間に書いた人物名。この僕と彼女のお話の中に出てくる邪魔な登場人物の。
「やっぱり、コイツからかな・・・」
そこらに転がっていた赤ペンで名前の上の大きくバツ印を付ける。
ヘチャン、まずはお前からだ。良い奴だったさ。でもな、邪魔なんだよ。
コイツさえ居なくなれば、僕は、僕は。
＿＿＿
この時私は何も知らなかった。
少し疑問が残るとはいえ、ジェノはやさしい恋人だったし、繋いだ手から伝わって来た愛はまっとうなものだったと信じてる。
けど、目の前に起きている事こそ真実で、神様は残酷だ。
今まで信じていたものすべて、嘘だったのだ。
私の頬を愛おしそうに撫でる手を私はどうしても振り払えない。
「A、僕が全部してあげるからね」
＿＿＿＿
長年探した理想を叶えた主人公ちゃんに執着する彼氏
VS
常に助けてくれた主人公ちゃんを護ると誓った幼馴染
人間の闇の部分が丸見えの戦い。果たして勝者はどちら・・？？？
続く (更新停止中)
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作者名：My candy boy | 作成日時：2017年10月21日 0時
